制作中の津軽塗マグカップを手に、輪島塗への思いを語る坂本会長

 青森県漆器協同組合連合会は、1月の能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市の伝統工芸「輪島塗」の復興支援イベントを企画している。このうち津軽塗職人でつくる「津軽塗伝統工芸士会」は29~31日の3日間、弘前市で津軽塗の箸の研ぎ出し体験と販売会を行い、体験料の全額と商品売り上げの一部を義援金として寄付する。同工芸士会の坂本彰彦会長(67)=鶴田町=は「輪島塗と職人を守るため皆さんの協力が必要」と呼びかけている。

 全国の漆器産地組合が加盟する「日本漆器協同組合連合会」は1月に「輪島塗を応援する会」を立ち上げ、ホームページなどで義援金の募集を開始した。他県の組合などでは震災で自宅や工房を失った輪島塗の職人を受け入れたり、必要な道具や材料を提供したりしている。

 青森県の場合、石川県との距離的な問題に加え、津軽塗と輪島塗とでは製法が大きく異なることから職人の受け入れは行われていない。坂本会長は「青森へ移住を希望する輪島塗職人から仕事をあっせんしてほしいという依頼もあったが、生活面での支援の問題がある」と難しさを説明した。

 漆器産業の職人は、各地で開かれる物産展やフェアなどの催しを通じて横のつながりがある。坂本会長は以前から輪島塗伝統工芸士会会長の坂口彰緒(あきお)さん(50)=輪島市=と親交があり、会うたびに酒を酌み交わす間柄だ。震災直前の2023年12月中旬には大阪市の販売会でも顔を合わせたばかりだったという。

 坂口さんによると、輪島市内の自宅兼工房は半壊。建物の基礎部分が大きく被害を受けたため、今も水が使えない状態が続いている。坂口さんは取材に「制作の作業はストップしたままで、再開のめどは立たない。恐らくこの先2年ほどは作業ができないのでは」と嘆く。

 工芸士の約7割が県外へ2次避難する中、輪島市内で漆器店を営む坂口さんは地元にとどまり、再建に向けて動き出した。段ボール箱に保管していたため無事だった商品をかき集め、2月は都内で開かれた「いしかわ伝統工芸フェア」に出展した。坂口さんは「前を向けるのは皆さんの応援のおかげ」と感謝を示し、「まずは手元にある商品で資金をつくり、一日も早い復興を目指したい」と語った。

 3月のイベントは弘前市伝統産業会館で行う。開催時間は午前10時から午後4時まで。箸の研ぎ出し体験は1膳1500円で、受け付けは当日のみ。津軽塗の箸や汁わん、お盆、アクセサリーなど約200点を販売する。

 また、4月19~23日は弘前市文化センターで津軽塗展示販売会「さくら市」を開催。問い合わせは両イベントとも県漆器協同組合連合会(電話0172-35-3629)へ。

坂口さんの自宅部屋。漆器を展示していたガラスケースが倒れ、中に入っていた商品の多くが破損した(坂口さん提供)

震災で車庫兼住宅の1階部分が倒壊し、建物の下敷きになった坂口さんの営業車両(坂口さん提供)

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