ねぶたにともす美の感性/美大・芸大卒3人修業

ろう書きのため、筆を走らせる青木さん

 開幕まで1カ月半を切った青森ねぶた祭。著名な美術大学や芸術大学を卒業し青森県外から移り住んだ30代の3人が、制作の現場に新しい風を吹き込んでいる。いずれも第7代ねぶた名人・竹浪比呂央さん(65)の門下生。「いつかねぶた師に」などと夢を抱き、唯一無二のねぶた作りを目指す。

 川崎市出身の青木凜(りん)さん(31)がねぶたと出合ったのは、多摩美術大学(東京都)に在学していた2014年。青森市にある竹浪さん主宰の研究所を訪れた際、間近で見たねぶたの面が、専攻していた彫刻と重なり、魅力的に映った。15年、竹浪さんの元へ弟子入りを直訴。同大大学院に籍を置きながら、休みを利用し制作スタッフの一員として青森に通った。関東に就職したものの、ねぶたへの情熱は冷めず、離職して3年前に青森県移住を決めた。今は日中の会社勤め以外、制作に全力を注ぐ。

 修業して10年。いろんなことが見えてきた。「書き割りは書道、構図と色の配色はデザイン、針金による造形は彫刻という、まさに総合芸術。皆で協力して作り上げるという意味では舞台にも近い」と表現する。「若手ねぶた師の登竜門」とされる今年のミニねぶた展にも出品するなど少しずつ成長してきた。一方で竹浪さんのように思いを自在に形にできず、悩みを深めることも。「知識量、引き出しの多さ、周りのスタッフを生かす気配り。いろんなことを吸収し、見る人の心にじんと響くようなねぶたを仕上げたい」と、独り立ちへの思いを明かした。

 長野県出身の田中悠志さん(30)は、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の日本画コース卒。大学の講義でねぶたを取り入れているのが、制作の道に入るきっかけだった。卒業制作もやっぱりねぶた。在学中、竹浪さんとの出会いでさらに憧れを募らせ、7年前に青森市への移住を決めた。

 「ねぶた制作は、針金で日本画を描くようなイメージ」と制作の魅力を語る。新型コロナウイルスの影響で祭りが中止に追い込まれ制作が一時頓挫した際、喪失感を抱いたことで「ねぶたは自分の人生の一部」と気付かされたという。電気工事士として働く傍ら、夜は制作に没頭する忙しい日々を過ごしている。

 井上舞さん(31)は大阪市出身。京都市立芸術大学時代、日本画を専攻していた。現実に存在しない生き物が、まるで命を宿しているように躍動する姿に心を奪われ、弟子入りを決意。昨年から3年間と期間を決めて青森市内に移り住み、竹浪さんのねぶた小屋に出入りしている。ねぶた制作のノウハウを自身の日本画制作に落とし込む考えもあり、「この貴重な経験を、自分の糧にできたら」などと語った。

 師の竹浪さんは「今やねぶたは造形美術として世界に認められていて、価値は非常に高い。3人とも表現力、思考力とも光るものを持っている。ぜひ制作の現場で生かしてほしい」と大きな期待を寄せている。

骨組みのため、手を動かす田中さん

竜のうろこの下書きに取り組む井上さん

青木さんが制作した「女性首像」=本人提供

田中さんが大学卒業時に制作した「天手力男神(アメノタジカラオ)」=本人提供

井上さんの作品「《个》(か)」=本人提供

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