弘前にUターンの男性、すし店開業へ

加藤さんと妻の真奈美さんの店「すし桜」の店内。29日の開店に向け、仕込みが続く=24日午前

 青森県弘前市出身で東京・銀座などで23年にわたって修業を重ねてきたすし職人の加藤大貴(たいき)さん(40)が、東京で知り合った妻と共に地元へUターンし29日、同市駅前町に念願の自分の店「すし桜(さくら)」を開く。加藤さんの出店意欲を受け止めた地元の金融機関や経済団体などが、資金の融通から仕入れ先の確保などの細かい相談まで全面的にバックアップした。加藤さんは「おいしいおすしで恩返ししたい」と誓っている。(2021年12月26日 東奥日報掲載記事)

 大鰐高校を卒業後すぐに上京。著名なすし職人の増田勇さんを師と仰ぎ、数々の和食店やすし店で働いた。最後となった「銀座鮨 すし縁」では、にぎりや仕入れ、若い職人の指導など責任ある仕事を任された。

 Uターン創業を夢見るようになったのは30歳の頃。「青森は自然が豊かで、冬はスキーもできる」のが大きかった。同じ職場で知り合い、10年以上の付き合いがあった妻の真奈美さんと今年6月結婚。真奈美さんも昨年、加藤さんと一緒に青森県をくまなく巡っているうちに、「素晴らしいところだと感動した」という。

 目指す店は青森県の素材をふんだんに使い、高級感も堪能できる「江戸前すし店」。カウンターには津軽半島産のヒバの一枚板をしつらえた。米は「粒がしっかりしていて、うちの酢やにぎりの大きさに合う」という「青天の霹靂(へきれき)」を使う。

 店名の「桜」は弘前公園の桜から取った。加藤さんは「さくらまつりに来るお客さんなど、全国の方々にも愛される店にしたい」と話す。

 すし桜の場所は弘前市駅前町6の9、サンズビル1階。電話番号は0172-55-5388。

▼地元経済界が全面支援

 加藤さんのUターン創業には、地元の行政、金融機関、経済団体がスクラムを組んで携わった。加藤さんに寄り添い、税金、経理、酒の仕入れなどさまざまな問題を一つ一つ一緒に解決。この伴走型の取り組みは現在、関係各機関で構成する「Uターン新規創業プロジェクト」という名の新しい体制づくりに結びついた。関係者は「Uターン創業の意向がある人は気軽に声を掛けて」と呼び掛けている。

 プロジェクトに参加したのは、市のひろさき移住サポートセンター東京事務所、21あおもり産業総合支援センター、弘前商工会議所や、県中小企業団体中央会、日本政策金融公庫、県信用保証協会、青森銀行の地元支店など。

 弘前商議所が最初に加藤さんから創業相談を受けたのは今年1月。これをきっかけに2月から10月まで、東京にいる加藤さんと構成機関の担当者をオンラインで結び、計6回にわたって話し合いを行った。創業計画、資金繰り、販路、各種補助金申請など、多岐にわたる問題を解決した。

 綿密に創業計画を作り上げたことで、加藤さんは2千万~3千万円ほどの融資と、300万円以上の公的補助金を得ることに成功。関係者によると、融資額としては「(希望額の)ほぼ満額」という審査結果だった。加藤さんは「感謝しかない」と語る。

 弘前商議所中小企業相談所の木下克也所長は、地域の人口減や経済の停滞を念頭に「各機関はUターン創業の成功を実績にしていかないといけない。希望者は関係機関のどこへでもいいので相談を」と話している。

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