絵画と古武道、米寿で二刀流 28日から個展

自宅のアトリエで。作品は「ヨットのいる湖」(油彩、30号、2009年)

 米寿にして、なお二刀流健在-。青森県弘前市の元高校教諭小山秀弘さん(88)は、市無形文化財の古武道卜傳流(ぼくでんりゅう)剣術第12代宗家で、美術団体国画会の会員でもある。武道と美術に共通する要諦は、剣豪宮本武蔵が説いた「観見(かんけん)二つの目付(めつけ)」。28日から弘前文化センターで開く、初画集出版記念の個展に向けて、意欲をみなぎらせている。

 小山さんは同市出身で弘前大学教育学部卒。弘前工業高校、弘前高校などで長年担当した教科は英語と美術で、こちらも二刀流。「英語の生徒からは『先生、本当に美術教えられるんですか』といぶかられたものです」と笑う。

 卜傳流は、剣豪・塚原卜傳を開祖とする伝統武術で、相手の攻撃をかわして、一瞬で技を決めるのが特徴。2009年に市無形文化財に指定された。

 小山さんは、140年の歴史を刻む市内の剣道場「北辰堂」を拠点に、多くの市民に卜傳流の精神と技を伝えてきた。21年、活動が評価され日本古武道協会(東京)から功労者表彰を受けている。小山家では、長男で県立郷土館学芸課副課長の隆秀さん(54)、弘前南高校教諭の長女花恵さん、隆秀さんの長男で弘大人文社会科学部3年秀晃さん(21)の3代が流派の文化を守っている。

 絵画は、小山さんと同じく旧制弘前中学、弘高で美術を教えた洋画家の棟方寅雄、鳴海健次郎の薫陶を受けた。これまで14回の個展を開催。毎年のように国画会主催の国展に出品しており、今年も5月に版画を出品した。

 「目の付けやうは、大きに広く付くる目也(なり)。観見二つの事、観の目つよく、見の目よはく、遠き所を近く見、ちかき所を遠く見る事、兵法の専也」(宮本武蔵「五輪書」、岩波文庫より)
 小山さんは「剣道も絵画も、全体を一気に見ることが大事。『見』とは具象的な形を見ること、『観』とはそれを通して相手の心を見ること。形だけを見るのではなく、形を通して目に見えないものを読み取って対応、表現するのです」と強調。「そのためには、とらわれのない心でいることが重要」と説く。

 画集には、19歳から描いてきた油彩、水彩、パステル、版画など約200点を収録。個展ではさらにえり抜いた約70点を出展する予定。花恵さんは「これまで家族で何度も画集にまとめるよう勧めたが『まだまだ、もっと描けるようになってから』と渋られていた。どこまでも高みを目指しているのでしょうが、この機会に出版できて本当に良かった」と喜んでいる。 「絵を見て、剣にも通ずる目付を感じてもらえれば」と小山さん。飽くなき挑戦を続ける88歳はなおも意気軒高だ。

 小山さんの個展は28日~10月1日、弘前文化センター1階美術展示室で。時間は午前9時~午後5時(最終日は午後4時まで)。

隆秀さん(手前)を相手に鋭い眼光で剣を打ち込む秀弘さん

北辰堂前で(左から)秀晃さん、隆秀さん、秀弘さん、花恵さん

弘前市

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