温泉入るとぐっすり眠れる さとみ温泉で実験、秋田大准教授が効果実証

 温泉に入るとぐっすり眠れる―。秋田大大学院医学系研究科の上村佐知子准教授(理学療法学)が、秋田市の秋田温泉さとみで行った実験で、温泉入浴が睡眠に与える効果が明らかになり、理学療法科学学会の学会誌5月号に論文が掲載された。一般的に温泉入浴は睡眠にいいと言われてきたことを、科学的に裏付けた。

 実験は2010年10月に実施。米スタンフォード大医学部精神科の西野精治教授、筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の神林崇教授らと共同で研究成果をまとめた。秋田大の21歳の学生8人を対象に、同温泉の塩化物泉、人工炭酸泉、水道水の湯に入浴した場合と、入浴しなかった場合の4パターンで深部体温と脳波を比べた。

 学生は1週間おきに同温泉に宿泊。午後10時から15分間、40度の温泉や水道水の湯に漬かった。睡眠時間は午前0~7時。実験日は運動量なども同程度とした。入浴しない場合も、その他の条件はそろえた。

 上村准教授によると、深部体温が下がると眠気や熟睡をもたらすことが分かっており、実験結果では、入浴した場合に平均深部体温が上昇し、睡眠前の1時間で0・5~0・6度ほど急下降。人工炭酸泉と塩化物泉では、睡眠後も入浴しなかった場合に比べて大きく下がる時間帯があった。

 また、深い眠りに入り、脳が休息状態にある時に出る脳波「デルタ波」の量は、人工炭酸泉と塩化物泉に入った場合、入浴しなかった場合の1・5倍多かった。水道水の湯は有意な差が見られなかった。

 上村准教授はこの理由について「温泉は塩分や炭酸ガスによる加熱作用が強いため、入浴すると体内に多くの熱が取り込まれ、深部体温が大きく上がる。この上昇の反動で熱の放出が進んで深部体温が下がり、深い眠りになったと考えられる」と分析。睡眠不足や不眠は認知症のリスクとなることが報告されており、温泉入浴が認知症の予防にも役立つ可能性があるとする。

 一方、入浴後の体調などを各学生に聞いた結果、塩化物泉の場合に疲労を感じる程度が大きかった。上村准教授は「疾患のある人や高齢者は人工炭酸泉の方が適しているかもしれない」としている。

 研究結果は学会誌「Journal of Physical Therapy Science」に掲載された。

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