焼きたてせんべい味わって キッチンカー始動

トラックにせんべい焼きの窯を載せた「キッチンカー」を前に玉川隆さん(左)、聡子さん夫妻

 青森県南部町名川に眠っていたせんべい焼きの古い窯を再生し、トラックに載せた「南部名川せんべい たまや」のキッチンカーが今月始動した。生まれ育った環境から「焼きたてせんべいのおいしさを知ってほしい」と、八戸市の玉川隆さん(50)、聡子さん夫妻が始めた。賞味期限わずか30秒という焼きたてせんべいに「恋」と名付け、機動力を生かして地元から全国へと南部せんべいの素晴らしさを伝えるため、さまざまな縁で実現したキッチンカーで奔走する。

 三戸町出身の聡子さんは、せんべい店の近所で生まれ育ち、子どもの頃から、焼きたてを食べる機会に恵まれた。旧名川町(現南部町名川)出身の隆さんも、近所の商店で焼きたてせんべいを食べた一人。隆さんは建設業コンサル会社を経営するが「平成の大合併で町名がなくなった名川の名前を残したくて屋号を決めた」という。キッチンカーは聡子さんを中心に、隆さんの長男・蒼琉(ありゅう)さん(19)も戦力。店のロゴマークは、自分たちを後押ししてくれたさまざまな縁を表現している。

 せんべいを焼く手動の窯は現在生産されておらず、窯を見つけるため、発案から約2年の月日を費やした。隆さんが子どもの頃に通った、今は廃業している店で見つけた窯は、70年以上前のものとみられ、南部町の新坂製函代表・新坂和博さん(63)の伯母・橋本みささんが使ったもの。みささんが亡くなり、埋もれていたという。

 窯を使いたいという玉川さん夫妻の申し出を新坂さんは快く受け入れ、無償で提供。新坂さんの父・末次郎さんが、姉であるみささんの晩年を面倒見ていたこともあり「亡くなった父も、伯母も窯を使っていただき喜んでいるのでは」。新坂さんが作った木箱も客の椅子で使われ、たまやの雰囲気にぴったりだ。

 せんべいに関して全くの素人だった夫妻は、一から試行錯誤し、師匠と仰ぐ、八戸市南郷地区の元沢せんべい店2代目、元沢とも子さんの指導を受けて温度管理を見直し「恋」が完成。白せんべい、柔らかいせんべいの耳、おこわを挟んだ「こびり」などを出し、八戸市の館鼻岸壁の朝市でも好評で行列ができている。

 一度に焼ける数は限られるが、ゴマ、ピーナツなどさまざまな味や、雑穀、そば粉などのせんべいにも挑戦したいという。今後は各種イベントのほか「食育への思いも込め、依頼があれば学校、幼稚園・保育園にも出かけたい」と夫妻。ふるさとへの思いを込めて焼き上げたせんべいを多くの人に味わってほしいと願っている。

館鼻岸壁の日曜朝市に出店した「たまや」のブースに行列を作る人たち=12日(玉川さん提供)

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