「弘前忍者屋敷」案内が生きがい

佐藤さんはサービス精神旺盛。お願いするとさまざまなポーズを決めてくれる

 青森県弘前市森町の住宅地の奥で「弘前忍者屋敷」を営む佐藤光麿さん(67)は屋敷の案内をする中で、その圧倒的な個性と、独特な魅力で観光客を引きつけている。佐藤さんは昨年12月の脳梗塞発症を乗り越え、現在では毎日観光客をもてなしている。「今では生きがい。屋敷がなければもう死んでいたかも」と佐藤さんはニヤリと笑った。

 脳梗塞での入院は約3カ月に及んだ。体重は15キロ以上落ち、左足と左手にややまひが残るという。18日、黒い鉢巻きと黒装束姿で現れた佐藤さんは「後遺症なのか、話していると、うっかり舌をかんだりする。駄目だなぁ」と小さな声で話したが、余談で江戸時代の弘前藩と幕府の関係について持論を語ると、ものすごい勢いで力説を始め、目はギラギラと輝く。冗舌な様子に病後という様子はあまり感じなかった。

 忍者屋敷は藩政時代に忍者が待機場所として使っていたとされる。元弘前市職員で、弘前公園のボランティアガイドだった佐藤さんは、2019年秋、弘前観光コンベンション協会が主催した弘前藩の忍者の謎を探るツアーに参加した。忍者には特に興味はなかったが、屋敷を初めて見て「本物だ。残さなければ」と強く思ったという。20年秋には私費で購入。佐藤さんは「よく言われるんですよ。『あんなの忍者屋敷じゃない。偽物だ』って。でもね、本物なんですよ」と自信たっぷりだ。居間にある忍者独特の歩き方をした時だけ音のなる床板が「動かぬ証拠」なのだとか。

 築200年を超える屋敷は老朽化が進み、存続のため、23年にクラウドファンディング(CF)で修繕費を募った。130万円の目標には届かなかったが、約80万円が集まった。屋根のトタンを直し、壊れた窓も新しいものに変えるなどした。佐藤さんは「感謝しかない」という。体調に不安はあるが、「忍者屋敷の運営は、あと5年を目標に頑張る。弘前観光の活性化の役に立ちたい」と話す。

 18日午後、台湾人の観光客5人が忍者屋敷を訪れた。佐藤さんは「ハローハロー」と出迎え、屋敷内でも英語で解説。手裏剣の使い方を指導する姿は背筋がピンと伸び、大きな声でハキハキと話していた。佐藤さんはこれからも忍者屋敷とともに生きていく。

 忍者屋敷の入館は予約が必要。連絡先は佐藤さん(電話090-2023-6950)へ。料金は大人千円、中学生以下500円(ともに税込み)。

弘前忍者屋敷の前でポーズを取る佐藤さん

台湾人観光客に手裏剣の投げ方を指導する佐藤さん

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