東北大浅虫センター、海洋研究100年/青森

熊野教授(左端)らの指導の下、研究に励む学生たち。地面に掘ったコンクリート製の水槽(手前)は、設立当時からあるとされている=11日、浅虫海洋生物学教育研究センター

 青森市浅虫にある東北大学大学院の研究施設「浅虫海洋生物学教育研究センター」が7月5日、創立100周年を迎える。東北トップクラスの研究環境や設備を誇る臨海実験所として、生物研究の発展に寄与するだけでなく、地域の水産業と教育の振興にも1世紀にわたり貢献。浅虫の海の恵みを生かし、海洋人材を育み続けている。今月15日には記念行事を開く。

 青森市と平内町の境界近く、裸島を望む陸奥湾沿岸に位置する同センターには現在、大学院生4人と教員5人が在籍。ホヤやウニなど海の生き物の発生メカニズムや進化の仕組み、分類や分布とその要因を探る研究に力を入れている。

 毎年近隣で採取した数千匹もの生き物を研究材料として他大学などに提供しており、海洋資源の豊かさは折り紙付き。博士後期課程2年の髙橋真湖さん(26)=宮城県出身=は「間近に海があるので、日常的に面白い生き物がいたら採りに行き、顕微鏡で見て研究することもできます」。

 同センターは1924(大正13)年、東北帝国大学理学部付属浅虫臨海実験所として設立した。初代所長は平内町小湊出身の生物学者・畑井新喜司博士(1876~1963年)。米国で教壇に立っていた畑井博士は開所準備のため21年に帰国し、東北各地の海岸を調査。海洋生物の種類が豊富だとして浅虫を設立場所に選定した。

 浅虫は当時、温泉街として活況の真っただ中。交通の便が良く、所員らが私生活も不自由なく過ごせるように-との意図もあった。建物には研究室や実験室のほか水族館を併設して大小さまざまな生き物を展示し、水族館は84年の閉館まで県民に親しまれた。

 研究は当初から基礎生物学が主軸で、畑井博士のシロナマコの生態や機能を明らかにした研究は世界的に有名だ。第4、7代所長を務めた野辺地町出身の野村七録博士(1893~1973年)はホタテの増殖研究に力を注ぎ、陸奥湾ホタテ産業の基礎を築いた。

 2011年には文部科学省の教育関係共同利用拠点に認定。他の大学や教育研究機関からの利用を受け入れ、国内外からの利用者は年間延べ約2千人に上る。15年からは隔年で国際臨海実習を行い、地域の小中高生の海洋教育や水産業への支援にも尽力する。

 「すぐそばに不思議な生き物がたくさんいて、それぞれが知りたいと感じたことを独自に追究してきたのがこの実験所。100年の歴史は重く、地域との交流や支援があってこそ続いてきた」とセンター長の熊野岳教授(53)。

 15日の記念行事では、これまでの研究や地域との歩みを振り返る。熊野教授は「SDGs(持続可能な開発目標)でも注目されている生き物の多様性維持を実践できる場として、学びたい人がいつでも国内外から集まれる場所であり続けたい」と話した。

設立した当時の浅虫臨海実験所(浅虫海洋生物学教育研究センター提供)


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