曽祖母暮らした空き家 ゲストハウスに/八戸

「八戸ゲストハウス トセノイエ」のリビングで開業に向けた準備を進める鈴木さん。モニター宿泊した友人からは「おばあちゃんの家のような懐かしい雰囲気に癒やされた」と好評だったという

 青森県八戸市吹上3丁目に、築約40年の木造平屋を改装した「八戸ゲストハウス トセノイエ」が22日、オープンする。運営するのは、今春東京から同市に移住した鈴木美朝(みのり)さん(27)。建物はかつて鈴木さんの曽祖母が暮らした家で、畳敷きの和室やふすま、障子などをそのまま残した「昭和のおばあちゃんの家」のような雰囲気が特徴。国内外から訪れた旅行者に八戸の街や食の魅力を楽しんでもらうと同時に「地域の人たちが気軽に集い、旅人と交流できる場をつくりたい」と語る。

 「トセノイエ」は、市中心街から徒歩十数分の閑静な地域に立地し、近くには長者山新羅神社やせんべい店などがある。ゲストハウスの名前は、13年前に97歳で亡くなった鈴木さんの曽祖母・小笹トセさんにちなんだ。鈴木さんは子どもの頃、夏休みになると十和田から遊びに来て、八戸三社大祭や近くの片町朝市などに出かけたという。「トセおばあちゃんの家には大勢の親戚が集まり、とてもにぎやかだった」と懐かしむ。

 鈴木さんは三本木高校を卒業後、都内の大学に進学。国際問題に関心を持ち、米国留学などを経験した。旅行が趣味で、バックパッカーになって国内外各地を巡り、ゲストハウスや民泊などを利用して現地の人々や他の旅行者と積極的に交流した。

 大学卒業後の2019年春、都内の会社に就職。しかし翌年、新型コロナウイルス禍に見舞われ生活が一変した。「このまま東京に住み続けるか」と悩み、県の移住支援事業に参加して県内に移住・起業した人たちと交流するうち「幸せの物差しはお金のあるなしではない。自分の好きな青森県で、やりたいことをして幸せを感じたい」と帰郷を決意した。今春会社を辞め、7年前から空き家となっていたトセさんの家を活用したゲストハウス開業へ準備を始めた。

 室内には畳敷きのリビングと利用者が寝泊まりする6畳間(定員各3人)が2室あり、1室は女性専用。基本は素泊まりだが、食材を持ち込めば共用のキッチンで自炊も可能だ。リビングに力士のイラスト入り座布団を置き、共用の浴室の壁に岩木山とリンゴの木の絵を友人に描いてもらうなど、さりげなく青森県名物のPRにも取り組む。

 鈴木さんは、ゲストハウス開業の理由を「私自身、旅行中に出会った人たちから多様な価値観を学び、人生の選択肢が広がった。そんな経験を八戸の人たちにもしてほしい」と説明。地域の人が講師になって旅行者に郷土料理の作り方を教えたり、外国人旅行者を招いて語学教室を開いたりと、今後「トセノイエ」を拠点に「年齢や国籍、価値観が異なる人たちのリアルな交流の場をつくっていけたら」と意欲を語った。

 鈴木さんは改装工事費などに充てるため、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で100万円を目標に支援金を募っている。締め切りは10日。問い合わせはトセノイエ(メールhachinohe.gh.tosenoie.2022@gmail.com)へ。

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