三忠食堂まつり出店断念、名物看板は本店に

毎年、弘前さくらまつりの出店に掲げている看板と黒沼さん。今年は三忠食堂本店で見ることができる

 約100年にわたり、観桜会や弘前さくらまつりの期間中に出店を営業してきた青森県弘前市の三忠食堂が今年、新型コロナウイルス感染防止のため、出店見送りを決めた。毎年出店に掲げている縦約1.8メートル、横約5.4メートルの看板は、まつりのシンボル的存在。ラーメンを食べるおじいさんと女の子が描かれたレトロで味のある画風を今年、弘前公園で見ることはできないが、4月に入ってからは弘前市和徳町にある本店の店頭に飾っている。店主の黒沼三千男さん(72)は「せめて看板だけでも見てほしい」と呼び掛けている。

 三忠食堂は1890年代後半、同市北横町に津軽そばを出す屋台を開き、1919(大正8)年に、さくらまつりの前身、第2回観桜会に出店した。看板は、黒沼さんの父で3代目の忠一さんが市内にあった看板店「光洋社」に製作を依頼、50~60年にわたって出店の店先に掲げてきた。看板のおじいさんと女の子は、看板を描いた本人と孫娘がモデルになっているといい、食べているのは「津軽そばはぽろぽろ切れるから、ラーメンでは」と推測する。

 食堂はまつり期間中、本店を休んで出店し、津軽そばやラーメンを提供してきた。独特な看板は人目を引き、珍しい看板の特集で雑誌に掲載されたこともある。看板をプリントしたTシャツ(税込み2500円)も販売している。

 出店見送りを決めたのは3月下旬。昨年の公園閉鎖を経て2年ぶりに出店する予定だったが、まつりで働いてもらうアルバイトから感染を懸念する声が上がり「年配の人が多いので、この状況では頼みづらい。長年出店していたので心苦しいが…」と黒沼さん。まつり中止以外の、出店見送りは初めてだ。出店を楽しみにしていた人のために、せめて看板だけでも見てもらおう-と本店前にミニねぷたとともに看板を設置。「看板と写真を一枚どうぞ」と撮影を勧める張り紙も出した。

 本店はまつり期間中、休まず営業する。昭和10~30年代のさくらまつりの写真をまとめた30分程度のビデオを流している店内は、もうまつりムード。日に日に膨らむ桜の花芽を意識しつつ、黒沼さんは「来年、出店営業できることを楽しみに、今年は本店でおもてなしします」と話している。

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