津軽海峡の荒波で育つミズダコは、上品なうま味と食感が自慢。冬を迎えて漁が本格化すると、漁協の加工場で職員が手際よくさばいていく

 まさかりの形をした下北半島で、刃の部分に位置するのが青森県佐井村。奇岩・巨岩が屹立(きつりつ)する仏ケ浦をはじめ、山並みが津軽海峡までせり出し、南北に連なる海岸沿いに集落が点在する。沿岸では篭(かご)漁が11月に始まり、名物のミズダコが盛んに水揚げされるようになった。

 佐井村漁協のまとめによれば、前年漁期(2018年11月~19年6月)のミズダコは約53トン、3200万円の水揚げだった。冬場の魚種では約1億8千万円に上ったマダラに次ぐ主力品目。漁期初めの篭漁は3~5キロサイズ中心だが、正月明けから6月まで底建網や一本釣りなどへ漁法を変え、1匹12キロを超す大物も揚がるようになる。

 タコ料理といえば刺し身や色鮮やかな酢ダコがおなじみ。しゃぶしゃぶも上品な味わいが人気だ。このほか、産地ならではのメニューとして話題を呼んでいるのが「どうぐ鍋」。土鍋にネギや豆腐を入れてみそで煮立て、ミズダコの内臓を放り込む豪快な料理で、内臓の部位ごとにさまざまな食感が楽しめる。

 漁業が暮らしを支えてきた土地柄だけに、タコに限らず海の恵みが自慢。「タラもタイもヒラメも、海峡の荒波で育つ佐井の魚は身の締まりが違う。冬は脂も乗って味も最高なんだ」。強い海風が窓ガラスを振るわせる村漁協で、木部司業務部長が自信たっぷりに話してくれた。

<「漁師縁組の若者に期待」/樋口秀視村長>


佐井村長・樋口秀視氏

 佐井村にとって、漁業は地元の経済を支える大きな存在です。冬場はミズダコやサケ、マダラが中心ですが、春になればウニ、夏はヒラメやマダイという風に、豊富な魚介類や海藻が津軽海峡から水揚げされます。

 一方、漁業者にとっては高齢化と担い手不足が切実な課題。そこで、村内にある空き家を有効活用して県外から後継者を募る「漁師縁組」事業を村と漁協が協力して進めてきました。将来性ある新たな漁業経営の確立に挑戦する若者たちに期待しています。

 景勝地として知られる仏ケ浦のほか、長福寺にある県重宝「十一面観音立像」(江戸初期、円空作)や漁村歌舞伎などを通じて、下北の個性あふれる風土に触れていただければと思います。

<荘厳な景色 名勝・仏ケ浦/観光船も定期運航>


体験観光で仏ケ浦の奇岩に目を奪われる村内の児童ら

 ダイナミックな自然景観で知られる下北ジオパークの中でも、抜群の知名度を誇る佐井村の「仏ケ浦」。津軽海峡を見下ろすようにそそり立つ巨岩、奇岩は国名勝・天然記念物に指定され、年間約20万人もの観光客が訪れる。

 太古の火山活動と、風雨の浸食作用で生まれた荘厳な景色は、人々の信仰を集める場ともなってきた。春から秋にかけては海から景色を楽しむ観光船も運航している。問い合わせは村総合戦略課(TEL0175-38-2111)へ。

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