野辺地「祇園ばやし」ゆかりの合奏曲を再び

町文化祭での「祭り日」披露に向けて練習を重ねてきた町民有志たち

 藩政時代の栄華を伝える青森県野辺地町の「のへじ祇園まつり」。その祇園ばやしをアレンジした器楽合奏曲「祭り日」をコロナ禍前のように町民で披露しようと、有志が本番となる25日の町文化祭へ向けて練習に励んでいる。企画した町活性化を目指す女性団体「ち~む野open」の前田智子代表(66)は「祭り日は野辺地町のソウルミュージック。みんなが楽しめる演奏になれば」と意気込む。

 「祭り日」は北前船交易で京都から伝わったとされるはやしが原曲。1965年、当時野辺地小学校で音楽を教えていた同町出身の渕沢和子さん(故人)が、夜神楽、祇園、渡り、剣、楽の5曲を1曲にまとめ、リコーダーや琴などの楽器で演奏できるよう編曲した。同年以降、同校児童が学習発表会などで演奏して継承しているほか、町の午後5時の時報としても流れる郷土のメロディーとなっている。

 2016年からは、ち~む野openの「町民にも演奏の機会をつくりたい」との思いに賛同した有志数十人が、町イベント「飛天の舞」で演奏。しかし、コロナの影響で20年を最後に同イベントが中止、再開もされなかったことから活動は休止状態となっていた。

 転機となったのは昨年末。コロナも落ち着き、前田さんらが再び発表の場を探していたところ、町中央公民館講座「みんなの教室」の参加者が成果を披露する町文化祭の存在を知り、今年4月に同教室の一つとして活動を再開した。

 メンバーは中学生から60代の十数人。月2回のペースで公民館和室に集まり、担当楽器の技術を磨いてきた。10分ほどの曲の中盤には歌唱部分もあり、「ゆかし ぎおんのしらべ そらに ひびく あきの 祭り日」と澄んだ歌声を響かせる。前田さんは「みんなで集まって練習するのも楽しく、世代交流の場にもなっている」とほほ笑む。

 江刺家穂香さん(野辺地中1年)と奈央子さん(51)は、20年の発表に続いて親子で参加。鍵盤ハーモニカの奈央子さんは「またみんなで演奏できてすごくうれしい。娘と一緒に頑張る」と笑顔で話した。

 琴を担当する相内真優さん(27)は今春、16年の発表会以来9年ぶりに弦に触れたが、「当時、一生懸命練習して体に染みついていた。祭り日のメロディーは小さい頃から当たり前に聞いていて生活になじんでいる。皆さんにいい曲だと思ってもらえるように頑張りたい」と語った。

 文化祭は町中央公民館で開催。25日は演奏や日本舞踊などの芸能発表、11月1、2日は絵画などの展示を行う。

▼優雅な旋律 郷土愛育み60年

 「祭り日」が1965年に誕生してから今年で60年。同年の初演から昨年度までに野辺地小学校を巣立った7100人余りの子どもたちが優雅な旋律を奏で、郷土愛を育んできた。

 祭り日は、祇園ばやしが好きだった母を同年に亡くした渕沢和子さんが、一緒に聴いた思い出の旋律を合奏曲に-と編曲。94年の東奥日報の記事では「町の伝統曲を児童たちと一緒に演奏する意義を考えると、心が躍った」と語っている。

 65年秋、同校で開かれた県学校保健大会で初披露。当時6年生だった添ノ澤直人さん(72)=十和田市=は「同級生とステージに上がって演奏したり歌ったりした。祇園まつりは野辺地の基盤で、祭り日の完成でさらに活力が増した。この曲には壮大なストーリー性がある」と語る。

 元教員の添ノ澤さんは同校に勤務していた93年、演奏の様子をビデオに収めて渕沢さんに送付。今年6月、当時届いたお礼の手紙が自宅で見つかったという。渕沢さんは長年の演奏に「ありがたいの一言に尽きます」と感謝した上で、気になった点を朱筆した楽譜を同封。祭り日に対する思いの強さが伝わってくる一通だった。

祭り日を編曲した渕沢和子さん。手にしているのは初演奏時の写真(1994年2月7日付東奥日報夕刊1面掲載)

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