45年愛されただしとふぐ料理 秋田市大町「三四郎」3月末にのれん下ろす

板場に立ち、客をもてなす北林さん
 ふぐ料理などで知られた秋田市大町の日本料理店「三四郎」が、3月末で閉店する。45年間、秋田では珍しい関西風のだしを生かした数々の逸品を振る舞ってきたが、高齢になったことや売り上げの減少を踏まえ、区切りを付けることにした。店主の北林莞助さん(78)と妻の洋子さん(76)は「志を持ち、おいしい料理を提供することに打ち込んできた」と語る。

 ふぐ、すっぽん、ぞうすい、蟹(かに)―。店があるビルの入り口には自慢のメニューの看板が並ぶ。落ち着いた雰囲気の店内には、食欲をそそるだしの甘い香りが漂う。40年来の常連という男性(74)は26日に来店し、「秋田で本格的な関西割烹(かっぽう)を味わえる唯一のお店。店主の仕事ぶりに品格があり、料理はまろやかで愛情のある味わい。なくなるのは寂しい」と惜しんだ。

 北林さんは北秋田市出身。幼い頃から料理人を志し、都内の大学を卒業後、銀座と赤坂の日本料理店で10年間、料理人としての基礎を学んだ。その間、秋田市出身の洋子さんと結婚。2人で地元の秋田に店を持ちたいと考え、1978年に独立した。

 店名は、少年時代に柔道に汗を流した北林さんが、柔道小説「姿三四郎(すがたさんしろう)」にちなんで決めた。板場で北林さんや弟子が腕を振るい、洋子さんが接客に努めてきた。


 店の特徴の一つが、色が透き通っていて、あっさりとした味わいのだし。修業先の銀座の日本料理店「出井(いづい)」は関西風の割烹料理が売りで、北林さんもその技術を身に付けた。がんもどきや芋の煮っころがしなど、だしの味わいを楽しめる料理をそろえ、濃い味付けが多い秋田では珍しいと評判を呼んだという。

 店の看板となってきたふぐ料理は、刺し身や鍋、唐揚げといった定番のほか、煮こごりや白子焼き、白子と日本酒を混ぜる「白子酒」など、ふぐを堪能できるメニューを用意し、多くの人が舌鼓を打った。

 開店以来、定休日を設けずに昼と夜の営業を続け、予約のない客も用意できる料理でもてなしてきた。北林さんの働きぶりについて、洋子さんは「仕事が好きで、おっくうな姿を見せたことがない」と話す。

 長年にわたり、多くの人を満足させてきたが、近年は繁華街の人出が減り、客足も徐々に遠のいた。高齢となり、店を引き継ぐ人もいなかったため閉店を決断した。洋子さんは「寂しさはあるが、格式ある店として営業を続けられたことのすがすがしさのほうが大きい」と話し、達成感をにじませた。

 店は31日の夜の営業を最後にのれんを下ろす。北林さんは「お客さんとの出会いのおかげで今までやってこられた。恩返しのつもりで最後まで料理を振る舞いたい」と語った。

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