中南津軽を“文学散歩” 県近代文学館 直筆原稿など90点

葛西善蔵の小説原稿などが並んだ企画展「中南津軽文学散歩」=青森市の県近代文学館

 青森市荒川の県近代文学館は企画展「中南津軽文学散歩」を開いている。作家の石坂洋次郎や俳人増田手古奈ら多くの文人を輩出し、森鴎外や司馬遼太郎、高浜虚子らが訪れて作品に残した中南津軽地域。ゆかりの作品や文学者に関する資料など約90点を展示し、同地域の豊かな文学的土壌と魅力について紹介する。

 3市2町2村(弘前・黒石・平川・藤崎・大鰐・西目屋・田舎館)に旧浪岡町(現青森市)を加えた地域が舞台。2020年に開催予定だった特別展が新型コロナウイルスの影響で中止になったことから、企画展として再構成された。

 会場では文学関係者による特別寄稿や同文学館所蔵の直筆原稿を展示。初公開は、十和田市出身の作家高橋弘希さんが同文学館のために寄せた、芥川賞受賞作「送り火」(2018年)の冒頭部分の浄書原稿。舞台とされる黒石市大川原で過ごした幼少期のエピソードや同作について、軽妙なタッチで記した特別寄稿もパネルで展示されている。

 葛西善蔵(弘前市出身)の私小説「姉を訪ねて」(1921年)の原稿も初公開。1枚目には元のタイトルが「汚染」だったことをうかがわせる記述も。現存する直筆資料が少ない作家の1人とされる葛西だが、書き直しの過程が見られるのも面白い。

 また、市町村ごとに、ゆかりのある文学作品から抜粋した一節に加え、屏風(びょうぶ)や歌(句)幅、色紙などの関連資料も並び、旅のように中南地域をぐるりと巡る趣向に。古川智映子さん(弘前市出身)の「氷雪の碑」(2007年)など青森県を舞台にした平成以降の小説なども展示している。

 会期は12月19日までで、11月26日からは資料を一部入れ替えする。同文学館の武永佐知子文学専門主査は「展示会を通して、地域の魅力を再発見することも多いのでは。文学作品や資料を通して、ちょっとした旅気分を味わっていただきたい」と話している。

 開館時間は午前9時から午後5時まで(10月28日、11月10日、同25日は休み)。入場無料。10月31日午後2時からは、武永文学専門主査による日曜講座「作家の中南津軽紀行~町と自然と温泉と~」を県立図書館4階集会室で開催。先着30人。申し込み、問い合わせは県近代文学館(電話017-739-2575)へ。

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