営業40年、五所川原の屋台そば店

「長年通ってくれるお客さんは孫みたいな存在。声を掛けられるとうれしいよ」と話す鹿内さん=22日夜、五所川原市

 五所川原市民に愛され、40年以上営業を続けている屋台そば店がある。「鹿内そば屋」の店舗は改造したワゴン車。店を切り盛りする鹿内ふさえさん(77)は「おいしいものを出して、また明日頑張るぞと思ってくれたら」と、今夜も車内で温かい一杯を提供している。

 同市中央1丁目の市道沿いにある空き地。停車させたワゴン車のバックドアを開けて防寒用のシートをかぶせ、午後8時、外のちょうちんに明かりをともす。鹿内そば屋のオープンだ。開店から程なくして、仕事を終えた会社員、親子連れらが次々と訪れる。

 鶴田町出身の鹿内さんは20歳の時、同市に住む夫・久造さん(85)に嫁いだ。以降、夫のアイスクリーム店を手伝っていたが35歳になったころ、義妹の後を継ぎ、屋台そば店を始めた。飲食業の経験はなかったが、義妹にだしの取り方から教わり調理法を習得した。当初、営業場所は五所川原工業高校の向かいで、多くの高校生らでにぎわったという。

 間借りしていた土地が整備工事に伴って使えなくなり、2年ほど前に親戚が所有する現在の場所に移った。定休日の日曜を除く週6日、午後8時から午前3時まで店を開ける。「年末年始も吹雪の時以外は休まない」と鹿内さん。提供するそば、うどんは350円。おでんも含めて40年間で値上げは一度だけだ。

 22日夜、常連が来店した。週1、2回訪れるという地方公務員の男性(42)は「高校時代から部活が終わると、そばやおでんを買って友達と食べていた。おいしいし、何よりもおばちゃんに会うと癒やされる」と20年以上通う理由を明かす。

 閉店後、鹿内さんが帰宅して床に就くのは午前7時。昼すぎには材料の買い出しに向かう忙しい毎日。一年で最も厳しい季節の冬はストーブをつけ、服を5枚重ね着し、寒さに耐えて客を待つ。それでも、「つらかったことは一度もない。一生懸命やってきただけ」とこの40年を振り返る。

 長い屋台稼業でも今年は異例の年だった。新型コロナウイルス禍で客足、売り上げともに半分以下まで落ち込んだ。「寂しい一年だったな」とぽつり。「来年はお客さんが戻ってきてくれれば。あと何年できるか分からないけど、お客さんとの何げない会話が楽しい。もう少し頑張りたい」と柔らかな笑みを浮かべた。

五所川原市

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