ビーガン料理で誘客、青森県など推進

「旅の宿 斉川」の夕食の和ビーガン料理(県提供)

 青森県黒石市内の4カ所の飲食店や宿泊施設が、肉や魚介類、乳製品、卵などを含め動物由来の原材料を一切使わない「ビーガン料理」を開発・提供している。県が同市や黒石観光協会と連携して行っている事業の一環。関係者は、新型コロナウイルス収束後の外国人観光客の誘客に向けた黒石市のアピールポイントになると期待している。

 県は2019年度から、黒石市などで外国人観光客の受け入れ態勢整備の取り組みを実施。同市では、「旅の宿 斉川」の齋川蘭子代表がかつて滞在した米ニューヨークで、宗教上の理由や動物愛護・環境保護への関心などから動物由来の食品を食べない「ビーガン」(完全菜食主義者)が身近にいた経験を基に、ビーガン料理の提供を提案した。

 今年3月には、ビーガン料理の世界大会で準優勝した料理家を県が招き、市内の飲食店や宿泊事業者を対象にした講習会を開催。メニュー開発に当たっては弘前市在住のビーガンに試食してもらい、意見を反映させたという。

 「斉川」は19年に和ビーガン料理を開発し、宿泊予約時に申し込みがあると提供。今年9月からは「十文字カフェ」「レストラン御幸」「ランプの宿 青荷温泉」も提供を始めた。「十文字カフェ」では、厚揚げスープカレーとアジアンソーメンを予約なしで食べることができる。「レストラン御幸」は前日までに予約すれば、ざるうどんセットや野菜天丼、ビーガン向けのつゆ焼きそばを提供。「青荷温泉」は宿泊予約時に申し込めば、ビーガン向けの和定食を出している。

 県によると、各店ともイワシやカツオを使用せず、昆布やシイタケのだしを使ったり、食べ応えを出すため、肉の代わりに大豆ミート、おからこんにゃく、厚揚げを使用するなど工夫しているという。

 4店舗は県を通じ、世界最大級のベジタリアン・ビーガンレストラン検索アプリ「HappyCow(ハッピーカウ)」に登録し、情報発信。県は今後も、ビーガン料理を扱う黒石市内の飲食店や宿泊施設を増やしていきたい意向だ。

 「斉川」では、ビーガン料理の提供を始めて以降、ハッピーカウを見た外国人のほか、日本人からも注文があったという。齋川さんは「名産の高原野菜を使ったさまざまな料理によって、地産地消につながるし、黒石の食文化もさらに豊かになるのでは」と期待する。

 県観光企画課の清野浩輝主幹は「外国人観光客が戻ってくるまでに受け入れ態勢を整備し、青森県でもビーガンに対応できるとアピールしていきたい」と意気込む。一方、「健康志向で野菜中心の食生活をしている日本人も多数おり、ぜひ利用してもらえれば」と語った。

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ビーガン 1944年に英国で提唱された。動物や魚の肉を食べないだけでなく、卵や乳製品を口にしない。ワインなどの製造過程でも動物由来の製品を一切使わず、ベジタリアンよりも徹底している。多くの国で割合は1~数%と少ないが、肉食の拡大が地球温暖化に与える影響などが指摘され、動物愛護運動も盛んになる中、急増傾向にある。日本を訪れるベジタリアンやビーガンの外国人旅行者は2018年の推計値で145万~190万人とされる。

「十文字カフェ」のアジアンソーメン(県提供)

「レストラン御幸」のビーガン向けのつゆ焼きそば(県提供)

「ランプの宿 青荷温泉」のビーガン向けの夕食の和定食(県提供)

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