ビオトープ化 活動の証しに/六戸高

六戸小児童と虫の越冬場所を作る六戸高生=17日

 青森県六戸町の六戸高校(吉田繁徳校長、生徒数167人)は同校に隣接する舘野公園のさつき沼を中心とした区域のビオトープ化を進めている。県立高校再編に伴い閉校する2022年度末までの4年間で、動植物がすみやすい空間を作る環境保全と環境教育の拠点とするのが目標。「閉校しても自分たちの活動の証しを残したい」という生徒や、地域有志らの思いが公園に新たな魅力を生み出そうとしている。

 舘野公園は同町が1982年に自然公園として整備を始めた。同公園ではこれまで、本格的な生態系調査や保護活動などが行われておらず、さつき沼には近年、特定外来生物などが確認され、在来生物が減少する危機的な状態だったという。そこで同校は2019年度から閉校までの4年計画で、舘野公園のビオトープ化を目指すことにした。

 19年度は動植物の調査を実施。生物と植物、地図作成などに分かれ、数回にわたり沼周辺を調べた。調査結果は19年11月のメイプルタウンフェスタで発表した。

 計画2年目となる本年度は環境整備作業を本格化。最初の活動日となった今月10日は、1、2年生約110人と町内外の有志約20人が参加。新たにメダカを放す池や昆虫の集まる場所などを造成した。さつき沼ではザリガニの駆除や、生息する鳥や魚の調査を行った。

 17日には六戸小4年生39人も一緒に作業。昆虫のすみやすい越冬場所「インセクトホテル」や、カブトムシの幼虫を育てる「カブトムシベッド」などを高校生らと共に作った。同小の山内啓路(はるみち)君(10)は「作業は初めて。さつき沼に虫がすめるところを作りたい」と目を輝かせていた。9月4日には六戸中学校の全校生徒100人超も参加して作業、各施設作りの続きや、外来植物の駆除作業を行う。

 秋以降、同校は町民を対象に本年度の調査や施設造成の進ちょく状況を報告するプレゼンテーションや、野鳥の観察会も予定している。

 17日までの調査で同公園には動物・昆虫72種類、樹木・草177種類が見つかっている。このうち10日には環境省レッドリストの絶滅危惧IB類の在来淡水魚「タナゴ」が2匹見つかった。他にも動物では絶滅危惧II類のマルタニシやゲンゴロウ、準絶滅危惧種のジュズカケハゼやトノサマガエルなどが発見された。植物では絶滅危惧II類の多年草ノダイオウも見つかった。

 奈良岡隆樹教頭は「在来の小さなタナゴが見つかったということは、それらを食べる外来のブラックバスなどが沼にあまり生息していないのではないか。自然環境が保たれている部分もあることが推測できる」と調査の成果を語った。

 同町観光協会の盛田嘉彦会長は「たくさんの生徒が協力してくれて本当に感謝しかない。協会としても全面的にサポートし、町内外からの来場者へのおもてなしにつなげたい」と話した。

 さつき沼で魚類などの調査活動にあたった苫米地美優さん(1年)は「学校がなくなってしまうのは悲しいことだけど、自分たちの活動成果は残る。公園によりたくさんの人がくるよう役に立ちたい」と話した。

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ビオトープ 「地域の野生生物が暮らす場所」を示す造語。語源はギリシャ語の生命を意味する「bio」と場所の「topos」から。工業化や都市化で失われた生態系を復元し、本来すむ生物が生息できるように造成・復元された空間などを示す。

さつき沼の鳥類の生息調査を行う六戸高生=10日

見つかった希少な淡水魚・タナゴ(六戸高校提供)


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