黒石・旧佐藤酒造の修復完了、地元有志が尽力

5年半にわたる修復がほぼ終わった旧佐藤酒造の母屋=11月20日、黒石市元町

 地元有志らのNPO法人が5年半余り前から修復してきた青森県黒石市の伝統的建物「旧佐藤酒造」は11月までに、主要建物の工事がほぼ終了した。カフェの利用や催しへの参加などで、市内外の人々が集まる場となってきたが、支援者集めに苦戦しているほか、持続的な施設運営が可能な収入の確保も道半ば。今後はカフェ営業と農業生産などを拡充しながら、活路を見いだしていく。

 約51メートルと市内最長の木製アーケード「こみせ」がある同酒造。10月末、鮮やかな緑色の酒林(杉玉)が正面2階の軒下に飾られた。同酒造の蔵人らが廃業直前に掲げて以来12年ぶりの新調だ。初めて制作に挑んだ親子連れや黒石高生、建物の地道な修復作業をしてきた有志らが拍手で祝った。

 活動主体のNPO法人「元酒蔵の歴史的建造物群を保存・活用する会」の庄司亜貴子さん(63)=同市=は「ホッとした。屋根が落ち、がれきだらけだった建物をここまで修復できるとは思わなかった」と笑顔を見せる。夫で同法人理事長の惠雄(よしお)さん(78)は「街の風景が随分引き立つのでは」と語った。

 同酒造は、江戸時代末建築の可能性がある大きな母屋や、明治期に建築された酒蔵などで構成する歴史ある建物。「初駒」などの日本酒が有名だったが2008年に廃業した。

 14年1月、夫婦がたまたま同酒造前を通ると、解体が始まっていた。土地・建物を取得した弘前市の企業に夫婦で頼み、土地を10年間借りて保存に着手した。当初数カ月は友人、知人らと10人ほどで建物や敷地内の廃棄物の撤去などに汗を流した。壊れていた建物は、夫婦の蓄えや官民の助成金などで費用を工面し、専門家に再建を依頼。外壁のしっくいなどは、市内の左官職人が無償で長期間作業した。19年10月末で母屋はほぼ作業が終了。既に修復を終えた西隣の蔵とともに、元町通りでひときわ輝く。

 元町付近の住民らに話を聞くと、60年ほど前までは商店などのこみせがつながり、雨雪を避けて歩けたという。現在は店もこみせもまばらで空き地も目立つだけに、同酒造近くの須藤優子さん(67)は「元町にこみせや建物が残って良かった」と語る。元町で生まれ育った鈴木美智子さん(72)は、近所の友人と一緒に同酒造のこみせの板塀に柿渋を塗る活動に参加。建物を「黒石の街の顔だと思う」と話し、「ほかにいくつかある素晴らしい建物も残ってくれたら」と願う。

 同酒造の建物ではカフェを週末の1~2日間開いているほか、裏手で畑を耕していて農家民泊もできる。黒石の街並みを考えるフォーラムや、音楽ライブなども開催。11月16日には、津軽地方を拠点に活動する葛西悟&フレンズなどによる4回目のステージがあり、約50人が楽しんだ。

 今後は「離れ」の建物や、大石武学流庭園などの修復も目指すほか、来春からはカフェの営業日数を増やす方向で検討中。畑作について、亜貴子さんは「きちんと畑をやりたい。こみせで野菜を売れたら」と拡充する考え。だが、借地料も含む毎月の固定費に見合った収入確保には苦戦。惠雄さんは「県外や国外なども含め、いろんな人に労働やアイデアの提供などのパワーをもらえたら」と、状況の打開を模索している。

旧佐藤酒造母屋内で開かれ、盛り上がった葛西悟&Friendsなどのライブ=11月16日

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