「紙から本ができるまで展2019」八戸

オープニングイベントで、展示に合わせて刊行した書籍について語る町口さん(中)、大城さん(右)、ブックセンターの森花子さん=7月31日

 青森県八戸市の八戸ブックセンターで「紙から本ができるまで展2019~中居裕恭×森山大道×町口覚×三菱製紙八戸工場~」が開かれている。八戸市出身の写真家で、2016年に亡くなった中居さんと、日本を代表する写真家森山さん(80)の「競演(デュオ)」を中心に、ユニークな仕掛けで「紙から本ができるまで」の過程を凝縮した空間となっている。会期は11月4日まで。

 中居さんは八戸工業大学を中退後、上京しWORKSHOP写真学校で学んだ。その後森山さんが立ち上げたギャラリー「CAMP」に参加。80年ごろから東北地方の撮影を始め、88年に八戸市内にギャラリー「北点」を開設した。東日本大震災後は「3.11を忘れない写真家の会」を結成し精力的に活動していたが、三沢市寺山修司記念館での森山さんとの二人展を準備中に60歳で他界した。

 「紙から-」の展示会場には、中居さんが八戸市内を写したモノクロ写真が並ぶ。蕪島やイサバのカッチャなど、なじみのある光景を独自の視点で鋭く切り取っている。

 会場の床には、三菱製紙八戸工場で使用されている木材チップが敷きつめられ、壁の一角はチップが山のように積み上げられている。木のにおいが漂う会場では、製紙工場や印刷工場、製本工場で録音した「生の作業音」がランダムに再生されており、展示を監修した造本家の町口覚さん(48)は「五感で、本ができるまでを感じてほしい。子どもも楽しめる展示にしたかった」と話した。

 7月31日に行われたイベントでは、町口さんと、ライターの大城譲司さん(51)が展示の見どころや今回の企画に合わせて制作した書籍「DUO 中居裕恭 森山大道」のこだわりについて語った。同書は、三菱製紙八戸工場の紙を使い制作。町口さんは「たくさんの種類の紙を使っているが、全部八戸の紙。日本の紙は、世界にも誇れる技術。その中の一つが八戸にある。もっと誇っていい」と熱く語った。

 同書は、中居さんと森山さんが、八戸と新宿というそれぞれのホームグラウンドを写した作品を、表紙側と裏側から対称的に配置したチャレンジングなデザイン。2冊並べるとタイトルが浮かび上がるデザインとなっている。中居さんの生前のインタビューや、森山さんと町口さんの対談も収録されている。

 「紙から本ができるまで」の展示は、ブックセンターが1周年を迎えた17年からスタート。同書の制作は、八戸市出身の木村友祐さんの小説や村次郎選詩集に続く企画。

 「DUO 中居裕恭 森山大道」は八戸ブックセンターや、青森市の成田本店しんまち店などで販売している。A5判96ページで1500円(税込み)。問い合わせは八戸ブックセンター(電話0178-20-8368)へ。

「紙から本ができるまで展2019」の会場

展示に合わせて刊行された「DUO 中居裕恭 森山大道」。2冊並べるとタイトルが完成するデザイン

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