青森ねぶた 囃子の出だしはどっち?


 青森ねぶた祭は始まる瞬間の囃子(はやし)を聴いてこそ-という通なファンの注目を集める各運行団体の囃子方。花火の号砲で夜間運行が始まる午後7時10分。それまでの5分間の沈黙を破り、最初に響かせる音色は笛か太鼓か。ファンには気になるところだが、囃子方会長として率いる“バンドマスター”によると、笛のソロから始まる「一番笛」は少数で、今や珍しいケースという。

 「出だし笛派か、太鼓派か? 今はおおかたどこの団体も太鼓からだよ」「以前は笛の出囃子から始まるところが大半だったんだけど」。昨年の囃子賞上位のバンマスが教えてくれた。

 転機は3~4年前。スタートはインパクトのある太鼓のほうが観光客に分かりやすく、喜ばれるとの理由から、大型ねぶた22団体が太鼓から始めることを申し合わせたという。

 ただ、先頭付近の団体(運行日ごとに変わる)やコースの右折地点などは、笛から始まる「進行」と呼ばれる囃子を奏でる可能性がある。全てのねぶたがコースを一周するには先頭の動き出しや渋滞しないことが重要で、後続と距離が詰まりそうな場合などは太鼓を省いて前進するためという。「沈黙を破る笛」を聴きたい人は、先頭でミスねぶたが先導するホテル青森(青森市堤町)付近が好位置かもしれない。

 演奏に定評のある囃子方をそれぞれの配置地点で待つ楽しみ方も。筆頭は昨年5年連続の囃子賞に輝いた日立連合ねぶた委員会の「青森ねぶた凱立(がいりゅう)会」だ。

 7月下旬、日暮れの青森港岸壁。あちこちで本番直前の練習に熱が入る中、強豪の音は特別響いていた。

 「凱立会は迫力ある太鼓で囃子を引っ張る。太鼓に負けない笛が響いて、鉦(かね)がきれいに入るといい囃子になる」と田中潤一会長(69)。自身も太鼓で正調囃子を継承してきた熟練は「大丈夫。仕上がり良く聞こえている。あとは本番、バランスを意識して精いっぱい楽しんで」と、最終練習で太鼓判を押した。

 昨年囃子賞2位の「青森菱友(りょうゆう)会囃子方」(川田貴志会長)と、3位に組・東芝の「囃子保存会に組」(川村誠一会長)のこだわりはともに「マイクを通さない生音」だ。

 音響機器を使わないのは両団体だけで、川田会長(52)は「個々に腕が良くてもバラバラでは絶対に響かない難しさがある」と話す。「でも、1本ずつの線が重なれば太い1本になるように、心一つに音が一つに合わさると格別になる」

 川村会長(58)も「に組は楽しく、生音でお客さんがのってくれるのが一番」と語る。

 気付けば夜。囃子を愛する市民が遠巻きに練習を聴いていた。

 「本番が始まるところ、いいんだよ。花火上がるちょっと前、ピンと空気が張って、太鼓がドドン」「東京にいる娘夫婦だっきゃ、最初の笛聞きたいって帰ってくるんだ」

 祭りは2日から始まる。

運行スタートが笛の囃子は今や少数という。写真は囃子賞常連の凱立会(左)と菱友会=7月下旬、青森港

最終練習を指揮する凱立会の田中会長(左)と、総仕上げの練習に加わる菱友会の川田会長=7月下旬、青森港

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