ふんわり照らすろうそくの明かりと竹製のフォルムが昭和時代の風情を漂わせた高田ねぶた

 夏、青森市内ではねぶたシーズンに合わせ、住民らが手作りのねぶたで地元を回る「地域ねぶた」が古くから運行されてきた。だが近年は、少子高齢化や参加者の減少等が、各運行団体の存続に影を落としている。関係者はねぶた師の協力をあおいだり、学校規模や複数団体合同で運行したりするなど、さまざまな形を取りながら、地域の伝統を守ろうと努めている。

 6月末、地域運行の先陣を切ったのは、古くからの技法で組み上げた高田地区の「竹ねぶた」。ろうそくの柔らかな明かりが情緒を漂わせ、地元住民や外部の跳人(はねと)団体、囃子(はやし)方など100人以上の威勢良い掛け声と囃子が夜空に響く。室谷榎音(かのん)さん(荒川中1年)は「毎年すごく楽しい」と笑顔を見せた。

 高田ねぶたは少子化の影響で1998年に運行を一度取りやめたが、地元有志が2017年に実行委員会をつくり再開した。制作は、ねぶた師・竹浪比呂央さん(59)。竹浪さんは伝統を重んじる住民に共感し、自身も約半世紀前に姿を消した「ねぶたの原型」を守ろうと、取り組む。実行委の高坂次男会長(73)は「子どもが楽しむことが大切」と話す。

 同市浜田地区で7月中旬に運行した「浜田小学校ねぶた」では、同校の児童たちが校庭で囃子を披露し、学校周辺をめぐった。引き手の6年生斎藤稜士(りお)君(11)は「みんなを引っ張れるように大声を出して頑張った」と汗をぬぐう。同活動はPTAメンバーでつくる「はまなす委員会」が担う。予算の都合で数年前に制作したねぶたを使い回しやりくり。「ここからねぶた祭に関わっていく子どもも多いし、大人になって担う側になってくれたらうれしい」とPTA会長の久保田開(かい)さん(48)は言う。

 一方、厳しい現実に打つ手がない団体も。西滝地区の「西滝子ども会」は、43年間続いた地域運行を2018年に取りやめた。全盛期に40人以上だった子どもが10人前後に減り、運営側も9割近くが70歳超と活動継続が困難に。戸山地区の「戸山が丘町会」は、近隣町会や子ども会との合同開催などで30年以上続くが、県営住宅・戸山第一団地の廃止に伴い、町会自体が数年以内に無くなるという。三上隆夫町会長(60)は「今年の運行(7月27日)で最後かもしれないから、派手にやりたいねってみんなと話している」と寂しげだ。

 青森北中学校は、後潟地区の子ども会会員の減少と障害者支援施設「徳誠園」入所者の高齢化で、長年続けてきた来年以降の合同運行が危ぶまれる。斉藤直樹教頭(50)は「今後は形を変えてでも運行を続けたい」と頭を悩ませる。

 青森ねぶた祭実行委員会の担当者は、近年は70~80団体が運行を行っているが「隔年や合同開催、他団体から人形を借りるなど、形はさまざま」と語るとともに「多くの団体が少ない担い手で続けていると思う。少子高齢化の影響はあるが、情報提供や運行助成金という形で支援を続けていく」としている。

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