三戸の山田さん、亡き妻に捧ぐジュノハート

ジュノハートの収穫に汗を流す山田さん=6月27日朝、三戸町梅内地区

 先月末に売り出された青森県産サクランボの新品種「ジュノハート」を特別な思いで育てた人がいる。三戸町梅内地区のサクランボ農家、山田仁志さん(51)。デビューを待ち望んでいた妻友子さんを半年前、突然亡くした。享年50。悲しみをこらえて実らせた「宝石」は市場に高い評価で迎えられた。感慨深く語る。「いい弔いができた」と。

 新潟県十日町市出身の友子さんとは27年前、知人の紹介で結婚した。厳しい口調は愛情の裏返し。柔らかな笑みが好きだった。新潟とは約500キロ離れた縁のない土地で、贈答用のための箱詰めや農作業を、二人三脚で続けてきた。

 13年前。山田さんは町で唯一、ジュノハートの試験栽培に取りかかった。県から送られた4種類の苗木を数年育て、実った粒を妻に食べさせたところ、友子さんは迷わずジュノハートの苗木を指さした。「これヒットするよ」。500円玉より大きく糖度が高い上、形は整ったハート形。三拍子そろった新品種へのお墨付きに山田さんは自信を深め、愛情を込めて「この子」と言うようになった。

 しかし、愛妻との別れは突然やって来た。「ママの様子がおかしい」。昨年12月23日夜、リンゴの配達を終え自宅に帰ってきたところ、当時中3だった次女季京さんから告げられ、部屋へ駆け込んだ。既に脈はなく、心肺蘇生を試みたものの、意識は戻らなかった。死因は急性心不全。山田さんは傍らでくずおれた。

 「何かできることがあったはず」。自分を責めることが多くなった山田さん。畑で一人になると生前の友子さんを思い出し、悲しみに暮れた。町の全人口のうち65歳以上の割合を示す高齢化率は、4割を超えた。農業が盛んな梅内地区でも昨今、担い手不足に悩む。8代続く農家として貴重な働き手を失った影響は大きかった。

 それでも立ち止まるわけにはいかなかった。友子さんの励ましが聞こえてくる気がした。そして季京さんの応援も大きかった。5月上旬に人工授粉、そして6月下旬には収穫スタート。大忙しの中、特大サイズが連なる姿に頬が緩んだ。

 7月1日。待ちに待った八戸市中央卸売市場の初競りで、15粒入りの箱は15万円で競り落とされた。1粒換算で1万円の大台に乗り、友子さんのかつての予言は当たった。「記念の品をたくさん食べさせてあげたい」と思い、山田さんは同じものを仏壇に捧(ささ)げた。

 今季のジュノハートの収穫は9日をもって終えた。来年は全国向け出荷、本格デビューが待つ。労働力の確保に悩み、悲鳴を上げる地域の果樹農家にとって久々の明るい話題に、山田さんも意気込みは強い。「全国のたくさんの人に味わってもらえたら」。夏空を見上げ、亡き妻を改めてしのんだ。

ジュノハート
名前はローマ神話で結婚生活を守護する女神「ジュノ」と、果実がハート形であることが由来。紅秀峰にサミットを交配して育成し2013年に品種登録された。一粒約11グラムで、糖度約20度、酸度約0.5度。全体のうち3L(横径28ミリ以上31ミリ未満)が8割近くを占め、4L(同31ミリ以上)も2割と大玉傾向が強い。色づきの優れた最上位品は「青森ハートビート」とブランド化され、販売されている。

昨年12月に亡くなった妻友子さん

山田さんの畑で収穫された大玉のジュノハート

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