「11ぴきのねこ」聖地三戸 ファン全国から

松宗菓子店の「にゃごらーのアジト」で、絵本をめくりながら松尾さん(右)の話を聞く石﨑さん

 青森県三戸町出身の漫画家・絵本作家故馬場のぼるさんの作品「11ぴきのねこ」の足跡を求め、国内外から同町を訪れる“聖地巡礼”が続いている。町は2011年度から「11ぴきのねこのまちづくり」に力を入れており、観光客受け入れには課題もあるものの、01年に馬場さんが亡くなって20年以上が経過してもなお、11ぴきのねこの魅力が多くの人を引き付けている。

 静岡から車で7月に来町した鈴木慎也さん(40)、としえさん(35)夫妻はどちらも11ぴきのねこファンで「ねこの石像などが街並みに溶け込んでいる」と満足げ。

 10月中旬、大阪から車で同町を訪れた石﨑瑞季さん(31)は「子どもの頃、寝る前に母に読んでもらったお気に入りの絵本が『11ぴきのねこ ふくろのなか』。三戸町に来るのが夢だった」と語る。石崎さんの町滞在は15日から3日間。初日は日曜日で閉まっている店も多かったが、開いていた松宗菓子店に立ち寄り、同店で販売している和菓子「11ぴきのねこたち」を手に入れた。

 同店は11ぴきのねこを求めて町を訪れる人のため、基本的に年中無休。店内にはファンが「にゃごらーのアジト」と呼ぶ、関連資料を集めたスペースがある。同店の松尾紀子さん(64)は「せっかく町を訪れる人をがっかりさせたくない。土、日、祝日は開いている店が少ないので、できる限りのおもてなしができれば」と言う。

 三戸郵便局で不定期開催する、11ぴきのねこが郵便局長を務める「ミャンのへ郵便局」の人気も高く、10月15日の開催には首都圏、関西、東北各地も含めて76人が同局を訪れた。備え付けのノートは“聖地”を訪れた喜びの声であふれ、橋本正俊局長は「びっくりするほどファンが全国に広がっている」と話す。

 自動車で来る人、電車で近くまで来てレンタカーを借りる人、青い森鉄道の三戸駅(南部町)まで電車で来て徒歩で回る人と三つのパターンがあるが、11ぴきのねこの石像は町内各所に点在、徒歩の人からは「貸自転車があると効率的に回れる」という声が上がる。

 三戸駅前の清水屋旅館(南部町)の女将(おかみ)極檀純さん(55)は「お客さまと会話をして11ぴきのねこファンだと分かると、キャラクターのついた皿で料理を出している」といい、「以前、貸自転車の話もあったが実現しなかった。行政などが自転車を用意するなら置くスペースはある」と言う。

 ただ、三戸町内には宿泊施設がなく、泊まる場所を求めて他の市町村に行ってしまう人も少なくない。一方、27年の馬場さん生誕100年に向けて松尾和彦町長が検討を始めると表明した記念館建設への期待も。観光客の一人は「住民の生活が最優先だが、ファンが集い休める交流スペースや、休みの日でも11ぴきのねこの情報に触れることができる場所が増えれば」と話した。

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