旧星野内科、複合施設に カフェやアトリエ/黒石

旧星野内科医院(奥)に入居した(左から)MIROKUさん、小山内さん、KOYAさん

 2012年の閉院から空き家状態となっていた青森県黒石市市ノ町の旧星野内科医院が、カフェやカウンセリングルーム、アトリエが同居する複合施設に生まれ変わった。各入居者はDIYなどでそれぞれ好みの空間に改装。来年には米粉パン店も開業予定で、誰もが気軽に立ち寄れる安らぎや交流の場として期待がかかる。

 院内に入ると真っ先に客を出迎えるのが「喫茶 私とワタシ」。医院の受付窓口を客にコーヒーを手渡すカウンターとして活用し、かつての診察室はこだわりの家具や照明を配置して昭和レトロ感あふれる空間に仕上げた。地元でカフェを開く夢をかなえた小山内理絵さん(28)は「飲み物を飲んで、外で頑張っている自分の内面をいたわる時間を過ごしてほしい」と話した。来月1日に本格オープン予定。

 元は宿直室だった1階奥には、公認心理師のMIROKU(ミロク)さん(50)=同市=がカウンセリングルーム「まんどろ」を構えた。今月下旬、大通りから移転してきたミロクさんは「人とのつながりや対話が生まれ、思いを吐き出せる場所になれば」と意気込む。元院長の机や棚はそのまま使用し、心理療法の道具を並べた。「小さい頃にここの病院に通っていた同年代も多い。地域に密着していた院長先生の意思をつないでいきたい」と語った。

 2階の旧病室には、画家KOYA(コウヤ)さん(30)=青森市=が1カ月ほど前にアトリエを開設した。床板を剝がしてコンクリートがむき出しの空間には、油絵やパステル画のほかTシャツなどのグッズが並ぶ。不定期で週に2~3日ほど制作活動に取り組む予定で、コウヤさんは「小さい個展やイベントも開催したい。アトリエができて作品と向き合う環境が変わったことで、自分の作品がどう変わっていくのか楽しみ」と話した。

 2階建てで1978年築の同医院は、黒石市産業会館のすぐ隣。昨年亡くなった元院長・星野禎一さん(享年85)の妻誠子(のぶこ)さん(81)が取り扱いに困り、税理士を介して同市の1級建築士古川正敏さん(36)に相談した。

 こみせ通りの旧ストゼン跡をシェアスペース「Circleこみせ」に生まれ変わらせた実績を持つ古川さんは今年6月、院内10部屋の内覧イベントを企画。小山内さん、ミロクさんの2人も参加していた。残りの部屋も引き続き入居者を募集している。用途や利用時間は自由。

 誠子さんは「一人でこの病院をどうすればいいのかと思っていたけれど、このように活用してもらえるとは思っていなかった。使われないままだと建物も傷んでしまうので、すごくありがたい」と感謝。古川さんは「昔は栄えていたというこの通りに明かりが増え、元の姿を取り戻していけばうれしい」と語った。

医院の受付をカウンターに活用したカフェ。隣接する診察室にはくつろげるようソファやテーブルも置いた

診察室を改装したカフェの内装

元院長の机や棚をそのまま活用したカウンセリングルーム

アトリエを構え、絵やグッズなどの作品を置いているKOYAさん

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