
2024年1月の能登半島地震で被災した秋田市出身の尾形真美さん(44)が、同市楢山で菓子と喫茶の店「うつつ菓子店」をオープンした。帰郷した古里で自分の店を持ち、再出発することを決断。店名には「現実を見ながら、地に足を着けて菓子作りを続けていく」という思いが込められている。
社会人を経て29歳の頃に辻製菓専門学校(大阪市、現辻調理師専門学校)を卒業し、都内の製菓関連企業や秋田市内のカフェなどに勤務した尾形さん。札幌市出身の夫との出会いを機に、2018年から石川県能登町に移住した。移住してすぐに同町の高級旅館に勤め、経験豊富な板前に囲まれながらフルーツカットなどの技術を磨いた。その傍ら、店舗を持たない菓子店として活動し、「コツコツファクトリー」の屋号で能登町内のカフェやバーなどに納品。22年に旅館を辞めてからは菓子作りを本格化させるため自宅に工房を設けようと準備していたところ、開設を目前にして地震に見舞われた。
住んでいた古民家はゆがみ、壁が剝がれ落ちたり窓ガラスが割れたりする被害に遭った。当時派遣社員として勤務していた工場は被災し復旧のめどが立たなくなり、職も失った。地震の光景がフラッシュバックするなど精神的にも大きなダメージを受けた。車中泊でしのいだ約1カ月後、地元・秋田市に避難した。
避難後すぐに菓子作りに没頭することはできなかったが、いずれは能登に戻って工房を構えて暮らしていきたいと考えていた尾形さん。そんな気持ちを変えたのは、震災からわずか8カ月後の昨年9月に能登を襲った豪雨だった。
「このまま戻ってやっていけるだろうか」。夫と話し合いを重ねて、秋田に住み続けることを決断。うつつ菓子店開業前に同所で営業していた菓子店「mogunezu(モグネズ)」の閉店に伴い、物件を引き継ぎ、今年になって開店に向け準備を進めてきた。
7月末のプレオープン後、開店を待ち望んだ地域住民らが続々と来店し、今月2日のグランドオープンからは6席の喫茶営業を始めた。
店では「たくさんの種類から好きな商品を選ぶ喜びを味わってほしい」との思いで、持ち帰り用の商品はプリンやバターサンドなど合わせて20種類ほどを並べている。モグネズでも提供していた石田珈琲店(札幌市)のコーヒー豆を販売しているほか、コーヒーやオリジナルのドリンクも用意。菓子製造から接客まで、尾形さんがほぼ1人で担当している。
能登時代に磨いたフルーツカットの技術を生かした、飾り切りしたシャインマスカットをのせたタルトなど、他にはない華やかな見た目の商品が特徴だ。プレオープン期間は菓子の材料にストックしていた能登産の塩や蜂蜜を主に使っていたが、県産食材を積極的に使用していく考えだ。
尾形さんは「なるべく地元産の食材で、安心できるものを届けたい。菓子の持ち帰りはもちろん、コーヒー豆だけを買ったり、喫茶でゆっくりしたり、思い思いに過ごしてもらえたら」と話している。
午前10時~午後5時、喫茶営業は午後1時から。火、水曜定休。祝日などは休業日が変更になる。問い合わせはLINE(ライン)の公式アカウントから受け付けている。
社会人を経て29歳の頃に辻製菓専門学校(大阪市、現辻調理師専門学校)を卒業し、都内の製菓関連企業や秋田市内のカフェなどに勤務した尾形さん。札幌市出身の夫との出会いを機に、2018年から石川県能登町に移住した。移住してすぐに同町の高級旅館に勤め、経験豊富な板前に囲まれながらフルーツカットなどの技術を磨いた。その傍ら、店舗を持たない菓子店として活動し、「コツコツファクトリー」の屋号で能登町内のカフェやバーなどに納品。22年に旅館を辞めてからは菓子作りを本格化させるため自宅に工房を設けようと準備していたところ、開設を目前にして地震に見舞われた。
住んでいた古民家はゆがみ、壁が剝がれ落ちたり窓ガラスが割れたりする被害に遭った。当時派遣社員として勤務していた工場は被災し復旧のめどが立たなくなり、職も失った。地震の光景がフラッシュバックするなど精神的にも大きなダメージを受けた。車中泊でしのいだ約1カ月後、地元・秋田市に避難した。
避難後すぐに菓子作りに没頭することはできなかったが、いずれは能登に戻って工房を構えて暮らしていきたいと考えていた尾形さん。そんな気持ちを変えたのは、震災からわずか8カ月後の昨年9月に能登を襲った豪雨だった。
「このまま戻ってやっていけるだろうか」。夫と話し合いを重ねて、秋田に住み続けることを決断。うつつ菓子店開業前に同所で営業していた菓子店「mogunezu(モグネズ)」の閉店に伴い、物件を引き継ぎ、今年になって開店に向け準備を進めてきた。
7月末のプレオープン後、開店を待ち望んだ地域住民らが続々と来店し、今月2日のグランドオープンからは6席の喫茶営業を始めた。
店では「たくさんの種類から好きな商品を選ぶ喜びを味わってほしい」との思いで、持ち帰り用の商品はプリンやバターサンドなど合わせて20種類ほどを並べている。モグネズでも提供していた石田珈琲店(札幌市)のコーヒー豆を販売しているほか、コーヒーやオリジナルのドリンクも用意。菓子製造から接客まで、尾形さんがほぼ1人で担当している。
能登時代に磨いたフルーツカットの技術を生かした、飾り切りしたシャインマスカットをのせたタルトなど、他にはない華やかな見た目の商品が特徴だ。プレオープン期間は菓子の材料にストックしていた能登産の塩や蜂蜜を主に使っていたが、県産食材を積極的に使用していく考えだ。
尾形さんは「なるべく地元産の食材で、安心できるものを届けたい。菓子の持ち帰りはもちろん、コーヒー豆だけを買ったり、喫茶でゆっくりしたり、思い思いに過ごしてもらえたら」と話している。
午前10時~午後5時、喫茶営業は午後1時から。火、水曜定休。祝日などは休業日が変更になる。問い合わせはLINE(ライン)の公式アカウントから受け付けている。