世界を知るきっかけに 「旅」テーマの書店、開業5周年/十和田

5周年を迎えた書店「Book&Space旅空間」の店主・中村さん

 青森県十和田市東五番町に旅をテーマにした本が並ぶ書店がある。その名も「Book&Space旅空間」。オーナーは、翻訳業や中国語の通訳ガイドを務める中村あずみさん(50)。コロナ禍を乗り越え、店は今年、オープンから5周年を迎えた。「旅や本が好きな人と出会えた。今後も、お客さんが世界を見るきっかけをつくれたらうれしい」。中村さんの意欲は尽きない。

 母の地元である名古屋市で生まれ育った中村さん。小学6年生のとき、家族で父の故郷である十和田市に移り住み、中学3年生までの4年間を同市で過ごした。その後、高校進学を機に、単身で親戚がいた名古屋市へ戻った。

 名古屋外国語大学では中国語を専攻し、中国・雲南省に約1年半留学。同省には50余りとされる中国の少数民族の半数ほどが住んでおり、多文化に触れる中で「中国の概念が覆された」と、旅の面白さに目覚めた。卒業後は、友人の勧めで中国のホテルに就職。転職を経て現地で約6年半働いた後に日本に戻り、その後、翻訳業を始めた。

 父の他界などを機に2019年、小中学生時代を過ごした十和田市へ。市内には曽祖父が蔵として使い、父がかつてスポーツ用品店として使っていた築100年以上とみられる建物があり、中村さんはそこで翻訳の仕事を続けた。

 この建物を使って何かできないか-。思案の末にたどりついたのは書店だった。「本屋をやるなら、好きな『旅』をテーマにしたい」。取り扱う本のジャンルはすぐに決まった。

 2020年1月のオープン後まもなく、コロナ禍に見舞われた。旅行を含めて漂う自粛ムード。だが、旅行気分を味わいに訪れるお客さんがいたり、旅と本をテーマにしたイベントに呼ばれたりと、少しずつ店の名前を覚えてもらえるようになった。中村さんは「本は旅を疑似体験できる。行ったことがある場所でも、違う視点があり、さまざまな感じ方ができる」と魅力を語る。

 店内には、エッセーや紀行文などの新刊本や古本が500冊ほど並ぶ。約2年前からは月2回のペースで、自分の好きな本の感想を紹介し合う「読書会」を開催。名物イベントとなっている。

 「店が5年も続くと思っていなかった」という中村さんは、感謝の意味を込めて特製のブックカバーを製作した。市内在住のデザイナーChieko Tazawaさんに依頼し、青森の自然や店の外観を取り入れた水色基調のブックカバーは、店で本を購入した客に無料で提供している。

 留学生同士で本を回し読みしたり、旅先で出会った人と本を交換したりするのが楽しかったという中村さんは現在も、旅と本の相性の良さを感じているという。今後に向けて「本のラインアップを増やしたい。ふらっと立ち寄っていただき、本屋に行くことを楽しいと思ってほしい」と話した。

 営業日は月曜日-水曜日(午後1時~5時)と第2土曜日(午前10時~午後2時)。不定休あり。詳しくは同店ホームページへ。

5周年記念で製作されたブックカバー

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