看板商品は味噌カレー味のおでん/金木・芦野公園「秋食堂」

ほんのりスパイシーな味噌がたっぷり絡んだミニサイズのおでん

 変わらぬ味と手ごろな値段で長年愛されている看板商品がある。小腹がすいたときにちょっと立ち寄りたい青森県五所川原市のお店、人気商品の秘密と店の歴史を店主の思いとともに紹介する。

 住民の散歩ルートや子どもたちの遊び場として利用され、春になると桜を目当てに多くの観光客が訪れる五所川原市金木町の県立芦野公園。公園内を走る津軽鉄道の踏切の横に店を構える「秋食堂」の看板商品は「味噌(みそ)カレー味のおでん」だ。注文すると、店を切り盛りする三代目の櫛引(くしひき)美貴子さん(41)が気さくな笑顔で運んでくる。

 こんにゃく、魚肉ソーセージ、ちくわ、さつま揚げ。おでんはシンプルに4種類だ。味噌がたっぷりかかったおでんをかじると、ショウガとスパイシーなカレーの絶妙なハーモニーが口に広がる。カレー味はしっかりしているが主張しすぎず、味噌との相性の良さに驚いた。

 二口ほどでぱくりと食べきれるサイズで、1本30円という安さも魅力だ。10本、20本とまとめ買いする客の姿も多い。櫛引さんによると、売れ筋はこんにゃく。「カレーのスパイスなどこだわってブレンドして作っているので、うまくマッチしているのかも」と、先代から受け継いだ秘伝のレシピの苦労を語る。

 おでんが誕生したのは60年以上前にさかのぼる。櫛引さんの義理の祖母で初代店主の秋元キヌさん(故人)が、芦野公園の桜まつりで出店をしていた男性から味噌カレーおでんの話を聞き、自己流で作り始めた。キヌさんがおでんを子どもたちに味見させるうちに、子どもの口に合わせた小さいサイズに変化していったという。当初のメニューはこんにゃくのみで、リヤカーにおでんを積んで公園や金木町内(現・五所川原市)を売り歩いていた。

 約30年前、キヌさんの息子で二代目の治さん(故人)、妻で櫛引さんの義母・富喜子さん(71)がおでんを売る拠点として食堂を開店した。治さんがスパイスを調合し、おでんのレシピを考案した。14年ほど前、二代目が体調を崩し、店は櫛引さんに託された。お客さんとにこやかに会話をしながら手際よく注文を受ける櫛引さんは「接客も慣れず、おでんの仕込みも少しずつ教えてもらった」と当初を振り返る。

 店内は、カウンターが4席、4人座れるテーブルが四つと、櫛引さんの声が届く広さ。窓からは、すぐそばを走る津軽鉄道の列車も楽しめる。ラーメンや親子丼もあり、昼食時に利用する客も多い。花見の時期は、昼からビール片手におでんをつまむ客で満席になるという。

 利用客は大人だけではない。近くに金木小学校があり、放課後や夏休みは子どもたちにとっても憩いの場となる。取材に訪れた日は運動会の振替休日で、小学生が仲良く並んでカウンターでおしゃべり。「居心地がよくて、おきまりの場所。寒かったらおでん、暑かったらかき氷だよね」と顔を見合わせて笑った。

 店の味を守り、客とともに歩んできた櫛引さん。「子どものころに通っていた人が大人になってまた買いに来てくれて(味が)変わってないねと言ってくれるとうれしい。店の雰囲気と熱々のおでんを味わってほしい」と顔をほころばせた。

 【住所】五所川原市金木町芦野84の171(芦野公園内)

 【電話】090-7934-8864

秘伝のレシピでおでんの仕込みをする櫛引さん

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