映画館フォーラム八戸 来年1月閉館

閉館まで1カ月を切ったフォーラム八戸の晴山支配人。「お客さまには感謝しかない」と語る

 青森県八戸市唯一の映画館・フォーラム八戸の来年1月5日の閉館まで1カ月を切った。ロードショー系も単館系も楽しめる映画館として19年余りにわたって愛されてきた中、2003年のオープン当初からスタッフとして働き、05年から支配人を務めているのが晴山努さん(45)。「スクリーンが大きくないなど、理想的なつくりではなかったかもしれないが、これまで支えてくれたお客さまには感謝しかない。最後まで駆け抜けたい」と前を向く。

 幼少から映画好きの父親の影響を受け、世界観に没入できる楽しさに魅せられた。八戸北高校を経て「どうせ学ぶなら好きなことを」と日本大学芸術学部映画学科の監督コースに進み、演出などを学んだ。各地から映画好きが集まり「井の中の蛙(かわず)だった」とカルチャーショックを覚えたが、仲間に恵まれ充実した学生生活を送った。

 卒業後は東京で約2年間、映像制作関係などの仕事に従事。いつかは地元へ-との思いもあり、その後Uターンした。八戸の映画館が次々と姿を消してしまっていた時代。そんな中で「映画館ができる」という新聞記事が目に留まり「この映画館で働くために八戸に帰ってきたんだ」と運命を感じた。

 市民らの出資を基につくられた「市民の映画館」は03年9月12日にオープン。映写機にフィルムをかけ、緊張しながら上映スタートのボタンを押したことは今でも覚えている。それから19年。東日本大震災や新型コロナウイルス禍で集客に打撃を受けて無力感に襲われたこともあった。企画した特別上映に大反響があったときは、やりがいとうれしさを感じた。「利益至上主義ではなく、地味だが良い映画も大事にしてきた。それがフォーラム八戸」という自負がある。

 閉館を迎えることが広く知られると、常連以外の客も足を運ぶようになったり、再起を望む声が届いたりもしたという。一区切りが迫り「ふわふわした気持ちだったが、最近は実感が湧いてきた。1月5日まで全うしたい」。

 フォーラム八戸では9日から閉館日まで特別上映「『市民の映画館企画』名画を見る! ザ・ファイナル」を開催。八戸市出身の小國英雄が脚本を手がけた黒澤明監督の作品のほか、往年の名作「ゴッドファーザー」など、利用客やスタッフのリクエストによる14作品を順次上映する。

 フォーラム八戸の閉館は、入居する商業ビル「チーノはちのへ」一帯の再開発に伴うもの。運営会社は再出店に関して模索中だが、建築費高騰やコロナ禍による売り上げ低迷により、現時点で未定となっている。

フォーラム八戸がオープンした2003年9月12日、多くの市民でにぎわうチケットカウンター

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