白神の文化と歴史発信へ資源調査

大浦光信公の墓所「御廟所(ごびょうしょ)」で中田さん(左)の説明に耳を傾ける都立大の学生ら=7日、鯵ケ沢町

 世界自然遺産・白神山地の魅力を自然だけでなく、文化や歴史の面からも発信しようと、地元自治体と東京都立大の山下祐介教授(都市社会学)が協力し、遺産地域周辺の文化資源調査に取り組んでいる。来年の世界遺産登録30周年に向けた取り組み。今月上旬には、山下教授と同大の学生ら14人が青森県鯵ケ沢町や深浦町、秋田県藤里町などを訪れ、山歩きや資料館の視察などを通して機運醸成へのヒントを探った。

 調査は、白神山地が位置する青森、秋田両県の自治体などで組織する「環白神エコツーリズム推進協議会」が企画。2011年度まで弘前大学の准教授を務めていた山下教授が、白神山地周辺地域の暮らしや歴史をまとめた冊子「白神学」などの編集に携わった経緯もあり、今回の協力に至った。

 今月7日、都立大の学生らはグループに分かれ、通行止めが解除されて間もない深浦町の青池や、歴代の弘前藩主に津軽家の始祖と敬われた大浦光信の居城である鯵ケ沢町の種里城跡を訪問。同跡では町教育委員会の中田書矢総括学芸員のガイドを受け、同藩の歴史や光信の生涯などについて学んだ。

 人文社会学部2年の野朱里(の・あかり)さん(22)は「世界遺産に登録されている中心だけが有名で、周りの文化や歴史について知る機会がなかった。地域の人の話は面白かった」と興味を深めた。中田さんは「青森だけではなく、環白神として考えるとまた違う見方ができ、魅力を発信する可能性も広がる」と話した。

 学生たちは実地調査で得た知識や情報について研究を進め、報告書をまとめる。同協議会は今後、山下教授の助言を受け、環白神地域を文化的、歴史的な側面から学べる教本作りと、その知識を生かせる「白神検定」の実施を目指す。

 山下教授は「自然の中を歩くだけではなく、環白神圏の文化や歴史を知る新しい物語で情報発信ができれば」と意欲を語った。

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