小野コレクション“里帰り” 三内丸山でサテライト展示

三内丸山遺跡センターで開かれている県立郷土館の館外展示。手前が寺下遺跡出土の浅鉢

 青森市の県立郷土館は、臨時休館に伴う初の館外展示「県立郷土館サテライト展示室with奈良国立博物館収蔵資料」を同市の三内丸山遺跡センター1階ギャラリーで開いている。メーンは同市のアマチュア考古研究家(故人)が収集した「小野忠正(ただまさ)コレクション」の一部。県内遺跡から出土し、奈良県の同博物館に収蔵された縄文期の資料が初めて“里帰り”展示されている。21日まで。

 今回の展示は国立博物館による考古資料相互活用促進事業の一環。全国各地から集められた国立博物館収蔵の資料を、地元に里帰りさせて地域の歴史や文化に親しんでもらうとともに、代わりに地元で保管されている優れた資料を国立博物館で展示するというもの。

 小野忠正さん(1899~1998年)は県内外の遺跡から出土した考古資料の収集家として知られる。元県文化財保護審議委員で、県文化賞受賞の画家・考古学者、小野忠明(ただあきら)さん(1903~94年)、現代美術家の小野忠弘さん(1913~2001年)は実弟。小野忠正コレクションは、忠正さんの没後、奈良国立博物館に収蔵された約1万点におよび、県立郷土館によると、県内展示は初めて。

 今回、里帰りしたのは、縄文晩期の南部町寺下遺跡や、同前・中期の青森市三内丸山遺跡、七戸町二ツ森貝塚から出土した15点。寺下遺跡出土の「浅鉢」は直径33.8センチ、高さ12センチで、口縁部分の凹凸のような突起、口縁部分から底部分まで全面に広がる雲形文様が特徴。同遺跡から約20キロ離れた三戸町杉沢遺跡出土の浅鉢(直系38.7センチ、同郷土館収蔵)も今回展示しており、杉野森淳子主任学芸主査は「これらの資料を見比べると、馬淵川流域に広がる亀ケ岡文化の芸術性の高さがうかがえる」と話している。

 忠正さんが採集し、忠正さんの遺族から郷土館に寄贈された資料として、縄文早期の東通村ムシリ遺跡から出土した「石刃鏃(せきじんぞく)」も展示。忠正さんの収集品が、“故郷”で久しぶりに顔を合わせた格好だ。

 相互活用促進事業に伴い、三戸町八日町遺跡出土で、県重宝の「遮光器土偶」(風韻堂コレクション)など5点が、郷土館から奈良国立博物館に貸し出され展示中。今回の館外展示ではこれらのレプリカも展示している。

 杉野森主任学芸主査は「本県の資料が分散しないように努めた小野忠正さんの業績と、本県の縄文文化の素晴らしさを感じてもらえれば」と話している。

小野忠正さん(1957年撮影、東奥日報社所有)

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