南部「堅豆腐」を残そう

堅豆腐を切り分ける田畑豆腐店の伸子さん。堅豆腐は1丁800グラムほどある=9月末、田子町

 古くから南部地方に伝わる「堅豆腐(かたどうふ)」を残そうと、青森県八戸市の百貨店やまき三春屋と宮城学院女子大学(仙台市)の学生らが「南部の堅豆腐プロジェクト」を立ち上げ、さまざまな取り組みを進めている。作り手の高齢化や大手メーカーとの競合などにより、年々減少する地域の豆腐店を守っていくため、堅豆腐を使った総菜やデザートを開発するなどブランド化を目指している。販売は12日から。

 三春屋の地下1階を地元の食材にこだわった食品売り場にしたい-と同店の桜庭伸浩副店長が新たな取り組みを模索。桜庭副店長が昨年11月、元八戸大学(現八戸学院大学)教授で、宮城学院女子大学現代ビジネス学科の石原慎士教授に協力を依頼した。今年2月、プロジェクトを組織。マーケティングを専門とする石原教授が堅豆腐に目を付け、学生と現地調査や堅豆腐を使った商品開発などを進めた。

 近年、健康志向の高まりから豆腐や豆乳製品の消費は増加傾向にある一方、大手メーカーへの製造集約が進み、個人経営の店は年々減少。南部地方には八戸市や田子町など約10店しか残っていない。個人店では、豆腐は全て手作りで大量生産できないことや、作り手の高齢化、後継者不足など多くの課題を抱える。

 9月末、田子町の田畑豆腐店では、店主の田畑信男さん(66)と妻・伸子さん(65)が豆腐作りに精を出していた。祖父の代から堅豆腐を作っているという信男さんは「防腐剤は使わず、大豆とにがりだけで仕上げる。味、コク、ボリュームがうちの豆腐の魅力」と語る。「豆腐作りは力仕事で大変だが、2人だから地道に細く長くやってこられた。プロジェクトをきっかけに田子にも足を運んでほしい」と話した。

 プロジェクトには県内外の豆腐店9店が参加。「南部の堅豆腐」と書かれた統一ロゴを制作し、各店にロゴ入りの看板やシールを配布した。また、五戸町のコムラ醸造などが、堅豆腐を使ったさつま揚げやうどん、アイスクリームの開発で協力。八戸市や東京都などの飲食店5店は、堅豆腐を使った新メニューを考案し、提供を始める予定だ。

 桜庭副店長は「店ごとに味に個性があり、どの堅豆腐も本当においしい。将来的には参加店舗を増やし、堅豆腐という食文化とその作り手たちを守っていきたい」と力を込めた。石原教授は「調査を進める中で、各店主の豆腐作りへの思いを知り、絶やしてはならない食材だと実感した。最大限の成果が出るように挑戦していく」と語った。

 三春屋では、12日から特設コーナーを設置し、石原ゼミの学生らが堅豆腐や総菜などを販売する。

▼南部の堅豆腐 八戸市など南部地方に伝わる堅い豆腐。大豆の含有量が多いため堅く、1丁当たりの重さは800グラムと市販の豆腐の約2倍。やませの影響で安定した米の収穫ができなかった旧八戸藩で、大豆は藩の財政を支える作物とされ、正月など「ハレの日」に食べる煮しめや田楽に向く堅い豆腐が好まれた。

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