再オープンに向けて展示室で準備作業を進める岡田館長(左)と山本アートディレクター

 津軽の農村と風土をテーマに独自の世界を切り開いた農民画家・常田健(つねだけん)(1910~2000年、97年に県文化賞受賞)。その油彩画300点以上を収蔵する青森市浪岡北中野の「常田健 土蔵のアトリエ美術館」が没後20年に当たる今年リニューアルし、4月25日に再オープンする。運営主体がこれまでの遺族から常田健記念財団(高橋美智子理事長)に変わっての再スタート。5月16日には記念セレモニーも行われる。

 新たに運営に当たる同財団は昨年5月に発足。東京銀座でギャラリー悠玄を経営し、企画・展示のプロである高橋理事長を中心に、今年1月からリニューアル作業を進めてきた。館長は常田の次女・岡田文(ふみ)さん(72)が引き続き務める。

 再オープンの目玉は開館日を大幅に増やしたこと。これまでは遺族主体の私設美術館だったため運営に限界があり、開館日は月4日間程度にすぎなかったが、新たに週6日体制(休館日の月曜除く)とし、開館時間も午前10時~午後5時の7時間に延長する。

 また、アートディレクターとして東京在住の山本ミノさん(59)を起用したほか、専門スタッフとボランティアを配置した。売り物になっていた土蔵のアトリエ見学は従来通り行う。1~2月の冬期間の開館体制については今後検討する。

 美術館は地元有志らが集めた募金を基に岡田館長ら遺族が私財を投じて、自宅敷地内にあるリンゴ畑に2005年にオープン。生涯にわたって絵を売ることがなかった常田の作品を鑑賞できる唯一の施設として県内外から多くのファンが訪れ、同市浪岡地区の名所の一つにもなっている。

 しかし、仕事の傍らに施設を維持するのは「肉体的に限界」と岡田館長。以前から親交のあった高橋理事長らの協力を得て、財団方式で新スタートを切ることになった。高橋理事長が経営するギャラリー悠玄は1999年に常田の個展を開催し、常田人気を全国区にしたことで知られる。

 今後の運営方針について、アートディレクターの山本さんは「常田は唯一無二の存在。これまでは常設展示だけだったが、その魅力を最大限に伝えるためにも、その都度テーマを設定するなど展示方法を工夫していきたい」と説明。高橋理事長は「常田は『津軽』という土地柄で強調されがちだが、欧州の人たちにも受け入れられる要素がある。将来的に農業国であるフランスなど欧州に作品を持って行って見てもらうことを考えている」と話す。

 再オープンに合わせて「横尾忠則選定作品展」を前期(4月25日~8月30日)と後期(9月2日~12月27日)に分けて企画。「画集 常田健」(99年、角川春樹事務所)刊行の際、装丁・造本作業を担当した画家でグラフィックデザイナーの横尾忠則さんが選んだ常田の油彩のほかデッサン、東奥日報小説の挿絵など約30点を展示する。

 問い合わせは同館(0172-62-2442)かギャラリー悠玄(03-3572-2526)へ。

青森市

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