地元クラブ2歳馬 初陣/八戸・騎馬打毬/存続危機に希望の光

本番に向け、最終調整に励む2歳馬シェリー(左)と騎士たち=29日午後5時半ごろ、八戸市

 青森県無形民俗文化財「加賀美流騎馬打毬(だきゅう)」が、今年も八戸三社大祭中日の8月2日に八戸市で披露される。国内で唯一、古式に基づき継承されてきた同市の騎馬打毬は2027年に伝承200年目を迎えるが、近年は馬の数が減り、市外から馬を借りての開催が続いていた。今年は同市の「POLOライディングクラブ」で飼育される2歳牝馬シェリーがデビューすることとなり、必要数の6騎そろって出陣の日を迎える。

 7月29日、同クラブでは、県内外から集まった騎士6人が本番に向けて調整に汗を流していた。クラブで飼育する和種馬は、最年少のシェリーから最年長30歳まで計6頭。ほかの馬よりやや体が小さいシェリーも、騎士のかけ声に合わせ懸命に駆けていた。

 騎馬打毬の毬杖(まりづえ)などを使っての練習は、始めてまだ1週間ほど。騎士の板橋正直さん(46)は「ちょっと臆病な性格なのか、まだうまく動けない」と苦笑いする。それでも、今年は自力で6頭そろえて開催できることから「今回はシェリーに経験を積んでもらう機会。若さで何とか頑張ってほしい」と「希望の光」の成長に期待する。

 加賀美流騎馬打毬は1827年、八戸藩士たちが同市の長者山新羅神社に奉納したのが始まりとされる。八戸騎馬打毬会によると、通常は紅白各軍4騎ずつ、計8騎で臨む。しかし、新型コロナ禍で中止していた間に、馬2頭が老衰で死んだ。再開が見通せない中、新たな馬の飼育に踏み切れなかったという。23年の再開以降は、3騎ずつに規模を縮小した。

 馬の確保が難しい背景について同会の山内卓幹事長(47)は「八戸では馬や武具、戦い方まで古式。その形に慣れていない馬では難しく、簡単には借りられない。昔は個人で馬を飼う家もあったが、今は同クラブでしか練習できないことも難点」と話す。

 節目を目前に伝統武芸の継承が危ぶまれていることから、関係者らは騎馬打毬存続に向け取り組み始めている。先月、同市内で開かれた応援イベントでは、観覧席の整備や馬主制度、乗馬クラブの後継などについて意見が交わされた。

 山内さんは「第一の目標は騎馬打毬の存続。可能なら4騎ずつの対戦に戻したい。200年目を盛大に祝うためにも、できることから検討していく」と意欲を語る。

 加賀美流騎馬打毬は2日午後2時から、八戸市の長者山新羅神社「桜の馬場」で行われる。

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 加賀美流騎馬打毬 八戸藩8代藩主・南部信真公が武芸奨励のため江戸から取り入れたとされる。紅白各軍4騎ずつに分かれ、長さ約2.3メートルの毬杖を使い、自陣の毬門にノーバウンドで先に4毬ゴールした軍が勝ち。年一回、八戸三社大祭の中日に開催される。国内では宮内庁と山形豊烈神社でも騎馬打毬が行われているが、古式に基づき継承されているのは八戸の騎馬打毬のみ。

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