組子の技を後世へ 弘前に展示館オープン

齊藤さんが手掛けた組子作品が並ぶ展示館

 青森県弘前市茂森新町に1日、組子を活用したさまざまな作品に触れることができる展示館「津軽傳統(でんとう)組子館」がオープンした。館長は「津軽傳統組子師」で建具職人の齊藤正美さん(73)。昨年8月に死去した師匠・清藤清治さん=享年(95)=の自宅を活用した。齊藤さんは「師匠の自宅を当時のまま保存し、伝統技術を伝える場にしたい。亡き師匠への恩返しになれば」と話す。

 新しい展示館は総ヒバ造りで築45年の和風住宅。齊藤さんが手がけたふすまや障子もある。1階の展示スペースには、齊藤さんが手がけた球形ランプシェードやデスクライトなどの作品が並ぶほか、後継者である次男・正徳さん(41)の組子作品も飾られている。

 「先輩に逆らったやつは直ちに辞めてもらう」

 厳しい師匠だった。まず教わったのが食べ方や掃除など日々の立ち居振る舞い。制作中は寡黙で、ヒバを工具で加工する音だけが作業場に響く。手取り足取り教えることはなく、「見て盗め」が信条の昔かたぎの職人。齊藤さんは当時を振り返り「何度夜逃げを考えたか分からない」と苦笑いする。

 この自宅での師匠との思い出を尋ねると「叱られた記憶ばかり。この場所には良い思い出がない」と答える齊藤さん。師匠のありがたみが分かったのは60歳を過ぎてから。齊藤さんは津軽塗やこぎんとのコラボ作品を手がけているが、師匠にたたき込まれた基本技術が生きていると感じる。師匠の腕前にほれ込んだ顧客が、弟子の齊藤さんに注文を頼むこともあった。

 齊藤さんの作品を一目見ようと県内外から老若男女が訪れる。組子を職業にしたいと相談する人も来てくれる上、「若い方が組子を自宅に取り入れたいと相談してくれる」と手応えを感じている。

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組子 くぎを使わずに細い木片を組み合わせ、幾何学的模様を作り出す木工技術。世界最古の現存木造建築物、法隆寺でも手すりの装飾に使っている。伝統家屋のふすま、障子、欄間などで見ることができる。

天井に飾られた組子で作ったランプシェード

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