仁王尊4年ぶり「帰還」よりりりしく/最勝院

解体修理を終え4年ぶりに戻った阿形像(写真左)。修理前(同右、2018年4月。最勝院提供)は左目が欠け落ち、眉やひげの色も黒かったが、色を剥がした修理後は、制作当初の赤みを帯びた茶色が全体に浮かび上がり、より仁王像らしくなった

 五重塔で知られる青森県弘前市の最勝院にある、阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)の2体の金剛力士像(仁王尊)が東京での解体修理を終え5日、約4年ぶりに帰ってきた。江戸時代に作られた県内の仁王像16体のうち最古とされる2体。特に左目が欠けるなど損傷が激しかった阿形像は、当時のりりしい顔つきに戻った。10日から一般公開される。

 吽形像は承応2(1653)年、阿形像も同時期の制作とされる。修理前の阿形像はピンクに近い赤色で、眉とひげは黒っぽく描かれ、どこか優しい顔つきだった。今回、作業の過程で表面の塗装を剥がしたところ、制作当初の暗い赤みを帯びた茶色が現れ、17世紀中ごろの造形や色彩を忠実に再現できたという。

 最勝院の布施公彰(こうしょう)住職(62)は「万感の思い。りりしく射抜くようなまなざしが戻ってきた」と感無量の表情。修理を手がけた仏師の明珍素也さん(54)=明古堂(東京)代表=は「ほっとしている。制作された江戸前期の基準的な作品で文化的価値も高い」と語った。

 修理にかかった費用は、3400万円。市民から寄付を募り、現在9割近くが集まった。引き続き協力を呼びかけている。

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