恩人らに捧げた233点 志功記念館 秋の展示「頌と応」

陶芸家河井寛次郎にささげた板画「鐘渓頌」などが展示された秋の展示「棟方志功を育てた人々-頌と応」

 青森市松原の棟方志功記念館(小野次郎館長)は、秋の展示「棟方志功を育てた人々-頌(たたえ)と応(こたえ)」を開いている。独自の創作スタイルを追求し、“師”を持たずにいた志功は、民芸運動の創始者柳宗悦(やなぎむねよし)ら多くの人との交誼(こうぎ)を通して、新たな地平を切り開いていく。本展では恩人らを頌え、それぞれの教えに応えた板画や倭画、油絵、書など32作品、233点が並ぶ。

 志功を柳に紹介したのが、1936年の国画会展出品の板画「大和(やまと)し美(うるわ)し」に着目した陶芸家濱田庄司。志功は、50年の同展出品作「板歎異経(いたたんにきょう)十二芸業(じゅうにげいごう)仏達板画屏風(ぶったちはんがびょうぶ)」を、濱田の窯場がある地名にちなんで「道祖土頌(さやどしょう)」に改題した。

 柳は志功に足りないものを補うため、さまざまなことを教える指導者を選び、任に当たらせる。そんな柳に尊敬を込めて、志功は板画「柳仰(りゅうぎょう)板画柵」(51年)を制作。今回は3点のうち「上向妃の柵」「下向妃の柵」を展示している。また、キリストの衣のひだに三角刀で鋭利な線を多様に施し、緊張感を漂わせた板画「幾利壽富(きりすと)の柵」(56年)は、柳が高く評価した作品として知られる。

 仏教を題材に取り組むきっかけを与えた高級官僚水谷良一、互いの作品を認め合った陶芸家河井寛次郎、志功の本質を捉え、最大の理解者の一人だった大原総一郎…。日本民芸協会の人々や支援者との交わりが、志功の壮大な作品世界を育む大きな要因となっていく。

 油絵「太陽花・真赤図」「太陽花・黒図」(72年)は、画業に励むきっかけとなったゴッホへのオマージュとして描いた作品。白と黒を基調にした板画とは異なる、原色を使った志功独自の世界が描かれる。志功の才能を早くから評価した元県知事・竹内俊吉の句を彫り込んだ板画「竹内俊吉句板頌」(70~71年)なども展示されている。

 同記念館の武田公平副館長は「素直に話を聞き、作品に取り入れていった志功は『教えがいのある生徒』だった。柳や大原らによって才能を引き出され、開花させていった志功の作品をぜひ見てほしい」と話す。

 同展は12月12日まで(休館日は月曜だが、11月29日、12月6日は開館)。観覧料など問い合わせは同記念館(電話017-777-4567)へ。文化の日の11月3日は無料開館する。

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