常連客思い再開準備 創業141年の石場旅館/弘前

国の登録有形文化財に指定されている石場旅館

 静かな時間が流れる4月下旬、石場旅館(青森県弘前市)の4代目当主・石場創一郎さん(47)は、スマートフォンに浮かぶ英語やフランス語の文章に目を通していた。

 「そちらはどうだい? このカオス(混乱)は必ず収まるさ。石場さんもコロナには気をつけて」

 外国人常連客から送られてくるメールやLINEのメッセージだ。

 1879(明治12)年創業、141年の歴史を誇る館内は人影がなく、がらんとしている。「例年、国内外からの旅行者で満室となる桜のこの時期にだれもいない。これまで経験したことがない」。石場さんの表情は少し寂しそうだ。

 すべてが想定外だった。

 2月中旬、新型コロナウイルス感染者が出た「ダイヤモンドプリンセス号」のニュースを、宿泊客の50代米国人男性と眺めていた。男性は「たいしたことはないさ」と受け流し、石場さんもさほど心配していなかった。しかし、その前月、台湾人宿泊客が「これは大変なことになる」と険しい表情を見せていた。その姿が頭の片隅に残っていた。

 3月、感染拡大が深刻化するにつれ、4、5月の予約のキャンセルが目立ち始めた。石場さんの不安と焦りが広がっていった。

 そして、3月26日に飛び込んできたさくらまつり中止の知らせ。「ああ、やっぱり」。落胆の一方で、めどがついたことで、ほっとした気持ちがあった。「心も体も少し休ませよう」

 16年前、勤めていた県外の会社を辞め、実家の旅館業を継いだ。自分が知らない世界観・価値観と接することができる旅館経営の楽しさを感じた。ただ、睡眠3~4時間の多忙の中で、自分自身と向き合う時間を持てないで過ごしてきた。

 4月20日に宿泊客の受け入れを停止して以降、「建物の補修をしたり、本を読んだりして、心の均衡を保つようにしている」(石場さん)
 「弘前の経済の復活はいつになるのか」「常連のお客さんは戻ってきてくれるだろうか」。漠然とした不安が浮かんでは消える。その中で先日、ポルトガルのツアーコンダクターの女性からメッセージが届いた。「今年秋にツアーを組み、弘前へ行くので、準備をお願いします」

 「秋か。それまでに終息しているかなあ」。戸惑いながらも石場さんにうれしさがこみ上げた。

 「弘前を愛してくれる人のためにも旅館の灯を消したくない」

 顔なじみのお客の顔を思い浮かべ、営業再開の準備をしている。


宿泊者の受け入れを停止している間も、国内外の常連客と交流を続ける石場さん

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