盗難被害 十和田の祭典委、今年こそ豪華に

山車の制作作業に熱が入る「あけぼの祭典委」のメンバー=1日午後、十和田市三本木の山車小屋

 6日に開幕が迫った十和田市秋まつりに、例年以上の意気込みで臨む参加団体がある。昨年、山車小屋が工具などの盗難被害に遭った「あけぼの祭典委員会」(工藤文夫会長)だ。昨年は一時、太鼓車だけでの参加も覚悟したが、せめてもの鬱憤(うっぷん)晴らしにと、伝説の大泥棒「石川五右衛門」が釜ゆでの刑に処されるシーンを題材に選び、例年よりシンプルな山車を何とか運行した。「ことしは豪華に」。制作者たちは、いつも通りに山車を制作できる喜びを静かにかみしめ35回目の出陣を心待ちにしている。

 昨年4月の日曜日。山車制作責任者の佐藤裕亮(ひろあき)さん(56)が同市三本木にある山車小屋に入ると、電気のブレーカーが取り外されていた。小屋の中からは電動ドライバー、塗装用エアコンプレッサー、3年前に新調したLEDライト、衣装を縫うミシンと、何から何までなくなっていた。

 「ゼロからのスタートになると、パニックになった」と佐藤さん。同委員会は18歳以下が約60人も所属し、本番の運行では100人以上の大所帯となる市内有数の大型団体。「(山車を出さずに)若い人に恥ずかしい思いはさせられない。ある材料を使ってどうにかしよう」と制作を決意した。

 その後、盗みを働いた人物は逮捕されたが、道具の弁償や金銭的な補償はなかった。協賛企業による支援金で最低限の機材をそろえ、過去に制作した鬼の胴の部分を活用し、しゃれっ気も込め、大泥棒の釜ゆでを題材に選び、御用ちょうちんも載せた。

 盗みの被害に遭ったものの「全ていい方にもっていく明るさが、うちの取りえ」と副会長の田口大輔さん(47)は話す。山車運行団体の総合審査では特別賞も受賞。佐藤さんは「達成感があった。やっぱり作って良かったと思った」としみじみ振り返る。

 昨年はドタバタの中の参加だったが、今年は以前と同様、せり出しの仕掛けもある豪華絢爛(けんらん)な山車「『天下布武』第六天魔王 織田信長」を制作している。

 「今年は派手にいきたい。結構いいところまでいくんじゃないか」。佐藤さんはまつり直前の週末、仕上げの山車制作作業に汗を拭った。

 十和田市秋まつりは6~8日に開催。あけぼの祭典委を含む最大19団体が山車や太鼓車を運行する。主な日程は次の通り。

 ◇6日
 ▽後2・0 山車合同運行(三本木大通り)▽後5・30 三本木小唄流し踊り、みこし運行、よさこいなど(官庁街通り)

 ◇7日
 ▽後0・50 十和田囃子(ばやし)競演会(市中央駐車場)▽後5・40 山車薄暮・夜間運行(官庁街通り)

 ◇8日
 ▽後2・0 流し踊り、みこし運行、パレード、山車合同運行(三本木大通り)▽後5・0 歌謡ショー(駒っこ広場)

盗難被害に遭ってもユーモアを忘れず、大泥棒「石川五右衛門」を題材に制作した昨年のあけぼの祭典委の山車=2018年9月8日(十和田奥入瀬観光機構提供)

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