曳山まつりの人形、老舗店が撤退… 土崎・新町は「自分たちの手で」制作中

制作中の人形を確認する鈴木委員長(左)と小松さん
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されている秋田市の国重要無形民俗文化財「土崎神明社祭の曳山行事」(土崎港曳山まつり)の曳山人形作りに変化が起きている。長年まつりを支えてきた老舗人形店が一手に担ってきた人形の貸し出しを高齢などを理由にやめるため、今年参加する21町内の多くは市外や県外の人形師らに依頼。そうした中、参加町内の一つ「新町」は独自に人形を作る道を選んだ。

 JR土崎駅近くの一軒家の一室に高さ2メートルほどの裸人形が立つ。木の骨組みで体の形を作り、木彫りの顔と手足を取り付けたもの。今年のまつりで使う制作中の新町の人形だ。

 制作に取り組んでいるのは小松英顕さん(39)=同市土崎港中央。普段は市内の学童保育施設で児童支援員として働く。美術やデザインを専門的に学んだ経験はなく、我流で挑んでいる。


 筋肉を表現する色の塗り方が出来栄えを大きく左右するといい「裸人形は衣装でごまかすことができない。プレッシャーはあるが、町内の先輩たちに助けてもらいながら納得できるものをつくりたい」と話す。

 まつりと出合ったのは幼少期の頃。土崎は母親の地元で、引っ越しの多い家庭だったが、曳山まつりの時期は毎年のように土崎を訪れて曳山を引いた。勇壮で迫力のある人形に憧れ、いつか自分でも作ってみたいと思っていたという。

 まつりへの思いは大人になっても消えず、都内の大学を卒業後、土崎に移住した。「とにかく曳山まつりに携わりたくて、就職先も決めずに土崎に来た」。新町の一員として曳山まつりに関わり、準備や運行を通じて地域とのつながりを深めてきた。

 人形作りはコロナ禍の頃に趣味で始めた。見よう見まねで小型の人形を作り始めた。母親の実家で制作していたが手狭になり、2年前に現在の作業スペースを借りるほどののめり込みようだった。昨年8月の町内の盆踊り大会で自作の人形を披露し、好評を得た。

 本番の曳山に載せることまでは考えていなかったが、今年2月に状況が変わった。これまで人形を借りていた市内の人形店が曳山まつりから手を引くことが分かったのだ。

 今年参加する多くが新たな人形師らに依頼する中、新町の鈴木裕光委員長(52)は「自分たちの手で危機を乗り越えたいと思った」と話す。そこで白羽の矢が立ったのが、人形作りを趣味としていた小松さん。子どもの頃の夢が現実になった。


 制作するのは2体で、作業は仕事の前後を使って毎日6時間以上に及ぶ。現在の進捗は7割ほど。今後は頭の取り付けや色塗り、装飾などに取り組み、本番直前の7月中旬の完成を目指す。

 小松さんは「自分の人形が曳山に載るのが信じられない。躍動感があり、今にも動き出しそうな人形にしたい」と語る。鈴木委員長は「新町にとって大きな転換点。町内で制作することを新たな伝統にしたい」と期待を込めた。

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