弘前の醸造所、苦境打開へ瓶ビールをネット販売

スタッフと共に、ビールの瓶入れ作業を行うギャレスさん(奥)。「大変だけど、やるしかない」=15日午前、弘前市松ケ枝

 銀色の充填(じゅうてん)機が低い音をたて、四つ並んだ瓶にゆっくりとビールを注いでいく。作業するスタッフの後ろには千リットル入るタンクが六つ。ここから津軽産クラフトビールが全国に届けられる。

 大通りを折れた住宅地の中にある青森県弘前市松ケ枝の醸造所「Be Easy Brewing(ビー イージー ブルーイング)」。県内外の飲食店に15リットルのたるで出荷するのを収益の柱にしてきたが、新型コロナウイルスの影響で取引先はことごとく休業に追い込まれた。新たなチャレンジとなる一般向けの瓶ビール販売は、事業の継続を懸けた背水の陣。「これが売れなきゃ醸造所をたたむしかない」。作業の手を休め、米国出身の経営者ギャレス・バーンズさん(35)が覚悟をにじませた。

 米軍三沢基地で勤務していた元米兵のギャレスさんは、2007年の退役後、日本固有の歴史や文化が感じられる城下町・弘前を新天地とし、英会話教室を運営。クラフトビールの奥深さに引かれ、16年11月に醸造所を開いた。19年には世界各国のクラフトビールが集うコンテスト「インターナショナル・ビアカップ」に4種のビールを出品し、うち3種が銅賞に輝いた。

 順調だった経営に、新型コロナウイルスが影を落とし始めたのは今年1月。国内での感染が広がった3月にはたるの売り上げが半分に減った。4月に入ると「売り上げが落ちたんじゃなく『止まった』」(ギャレスさん)。月間売り上げは昨年比93%減という危機的状況に陥った。

 醸造所に併設するレストラン「ギャレスのアジト」も客足は遠のいた。グリーンカレー、オムライスなどテークアウトメニューを売り出したが、労力に見合う利益は到底上げられない。考え抜いた末、レストランは11日から6月末までの休業を決め、瓶ビールの販売に専念することにした。

 ギャレスさんは自らの貯金を切り崩し、瓶にビールを注ぐ充填機を購入。瓶やラベル、王冠、梱包(こんぽう)用段ボールをそろえるのも痛い出費となったが、13日にオンラインでの販売に踏み切った。24時間で全国の66人から注文が入り、まずまずの滑り出しに胸をなで下ろした。「普通なら半年くらいかかる準備を1カ月ちょっとでやった。さすがに疲れた」とギャレスさんは苦笑する。

 瓶ビールは330ミリリットル入りで550円(税抜き)から。今月末までに10種類近くを売り出す予定だ。「ギャレスのアジト」で毎日午前9時から午後6時まで販売する。インターネット販売は6本セットで注文を受け付けている。

 醸造所はもともと、地域経済への貢献を目的に開設した。だからこそ正社員8人の雇用は、国の雇用調整助成金を活用しながら最後まで守り抜く決意だ。「ここで働いて家を建てた社員もいる。この危機は、社員と一緒に乗り越えなければ意味がない」

弘前市

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