
昭和100年を語る上で欠かせない名物喫茶店が青森県弘前市土手町にある。1929(昭和4)年創業の「土手の珈琲(コーヒー)屋 万茶(まんちゃ)ン」。東北最古の店、と言われるほど歴史が深い。
「何『万』人のお客さまに、お『茶』を差し上げて、お客さまにも『ン(運)』がつくように」。そんな意味が込められた店は作家の太宰治、石坂洋次郎、画家の阿部合成ら著名人が愛し、訪れたことで知られる。作家・劇作家の井上ひさしさんが生前サインをしたためた色紙も飾られている。
現在の5代目店主は阿部郁(かおる)さん(32)=黒石市出身。高校時代からカフェ巡りが大好きで、歴史を感じさせる店がお気に入りだった。先代が一昨年、急きょ店主を退くことになり、運営管理会社の新店主募集に応募。運命の糸がつながった。
店前に置かれた半分のコントラバスがトレードマーク。創業当時からあるシャンデリアや、ぜんまい式掛け時計が昭和レトロな雰囲気を感じさせる。一方でアニメやマンガなどサブカルチャーを同居させているのが「阿部流」だ。食器棚に小中学生にも人気のバーチャルアイドル初音ミクら複数のフィギュアが並ぶ。なじみの客が持ち込んだのがきっかけで関連商品が並んでいった。弘前市が舞台で、アニメ化された漫画「ふらいんぐうぃっち」が並ぶコーナーも。オンラインゲームのファンも集まり、新たな客層を生み出す動きにつながっている。
「名だたる文化人が通った由緒ある店に不相応」。年配の常連に戸惑いを打ち明けられたこともあったが気にしていない。「サブカルは低俗、という見方があるのかも。でも店の間口を広げるきっかけにしたいから」。土手町商店街のシンボルだった老舗百貨店・中三は閉店した。豆の仕入れ値は上がり、物価高が経営に影響する。これまでのような形では生き残れない-という切実な悩みも店に映し出されている。
「太宰ってはまったらいちず、周りが見えなくなる『陰キャ(陰気なキャラクター)』だと思う。案外、こうした店も受け入れてくれるんじゃないかな」と推察する阿部さん。「ここまで来たら日本で一番古い店を目指す」と誓う。7月に結婚したばかり。子供に店を継がせるのが夢だ。
「何『万』人のお客さまに、お『茶』を差し上げて、お客さまにも『ン(運)』がつくように」。そんな意味が込められた店は作家の太宰治、石坂洋次郎、画家の阿部合成ら著名人が愛し、訪れたことで知られる。作家・劇作家の井上ひさしさんが生前サインをしたためた色紙も飾られている。
現在の5代目店主は阿部郁(かおる)さん(32)=黒石市出身。高校時代からカフェ巡りが大好きで、歴史を感じさせる店がお気に入りだった。先代が一昨年、急きょ店主を退くことになり、運営管理会社の新店主募集に応募。運命の糸がつながった。
店前に置かれた半分のコントラバスがトレードマーク。創業当時からあるシャンデリアや、ぜんまい式掛け時計が昭和レトロな雰囲気を感じさせる。一方でアニメやマンガなどサブカルチャーを同居させているのが「阿部流」だ。食器棚に小中学生にも人気のバーチャルアイドル初音ミクら複数のフィギュアが並ぶ。なじみの客が持ち込んだのがきっかけで関連商品が並んでいった。弘前市が舞台で、アニメ化された漫画「ふらいんぐうぃっち」が並ぶコーナーも。オンラインゲームのファンも集まり、新たな客層を生み出す動きにつながっている。
「名だたる文化人が通った由緒ある店に不相応」。年配の常連に戸惑いを打ち明けられたこともあったが気にしていない。「サブカルは低俗、という見方があるのかも。でも店の間口を広げるきっかけにしたいから」。土手町商店街のシンボルだった老舗百貨店・中三は閉店した。豆の仕入れ値は上がり、物価高が経営に影響する。これまでのような形では生き残れない-という切実な悩みも店に映し出されている。
「太宰ってはまったらいちず、周りが見えなくなる『陰キャ(陰気なキャラクター)』だと思う。案外、こうした店も受け入れてくれるんじゃないかな」と推察する阿部さん。「ここまで来たら日本で一番古い店を目指す」と誓う。7月に結婚したばかり。子供に店を継がせるのが夢だ。