著作でたどる鬼才寺山の足跡 弘前で展示会

寺山の著作が並ぶ弘前市立郷土文学館の小規模展示

 生誕90年を迎えた青森県弘前市生まれの劇作家・寺山修司(1935~83年)の多彩な著作にスポットを当てた小規模展示が、同市立郷土文学館で始まった。みずみずしい感性にあふれた第1作品集「われに五月を」から、深い思索がにじむ晩年の「幻想図書館」まで、同館所蔵の初版本など24点を展示。印象的なフレーズや寺山本人による後書きなども引用し、俳句、短歌、詩、映画、演劇とめまぐるしく変化を重ねた創作過程をたどる。9月25日まで。

 同館では4月から来年3月21日まで、寺山の短歌をテーマにした企画展「寺山修司-放たれた歌」を開催中。同じ会場の一角に短歌以外の多彩な著作を並べることで、さまざまなジャンルで活躍した寺山の多面性を浮かび上がらせている。

 「われに五月を」の説明では、巻頭詩の<きらめく季節に/たれがあの帆を歌つたか/つかのまの僕に/過ぎてゆく時よ>を添え、同作品集について「『生活を知覚できずに感傷していた』僕への別れとするとともにこれからの僕の出発への勇気としよう。僕は書を捨てて町へでるだろう」と述べる寺山の一文を紹介。

 新聞連載をまとめた「家出のすすめ」では、出版時に挑発的という理由で「現代の青春論」に改題したものの、読者の反響を受けて文庫では元の「家出のすすめ」となった経緯も。寺山は「この本を出したあと、私はにわかに家出に関する仕事が多くなった。家出人の訪問がふえ、彼らが私の家に住みつき、そして『家出』は言語のレベルから、実践のレベルへと移っていった」と振り返っている。

 同館の櫛引洋一企画研究専門員は「前書きや後書きの言葉には、新しいものを生み出そうとする真摯(しんし)な姿勢がうかがえる。表紙や装丁も面白いので、展示を通じて寺山という存在を感じてもらえれば」と語った。

 開館時間は午前9時から午後5時(入館は同4時半まで)。観覧料は一般100円、小中学生50円。問い合わせは同館(電話0172-37-5505)へ。

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