旧男鹿駅が酒造りの拠点に 輸出用清酒とどぶろく製造

醸造所を開業する岡住さん。内部にはもろみタンクなどが並び、酒造りが始まっている
 秋田県男鹿市の旧JR男鹿駅舎が酒造りの拠点に生まれ変わる。北九州市出身で大潟村在住の岡住修兵さん(33)が、どぶろくや輸出用の日本酒などを造る醸造所を3日にプレオープン。清酒製造免許の新規取得と地域活性化による雇用創出を目指す。

 かつて多くの通学、通勤客や観光客が行き交った旧男鹿駅舎。外観は以前の面影を残すものの、中に入ればこうじ室やもろみタンク、搾り機などが整備されている。



男鹿で恩返しを

 好きな日本酒に関連した起業を考えていた岡住さんは、神戸大を卒業した2014年に秋田市の新政酒造入り。蔵人を4年半務めて退職し、新たな酒造免許取得が原則として認められていない日本酒業界の現状を変えたいと思い立った。

 自然栽培の米作りに取り組む大潟村の農家の下で働き、どぶろくを製造販売する「木花之(このはなの)醸造所」(東京)醸造長も務め、独自の酒造りに挑戦するため今年3月に「稲とアガベ株式会社」を創業。9月には「輸出用清酒」と、どぶろくなどの「その他の醸造酒」の2種類の酒造免許を取得した。

 男鹿市を拠点としたのは、市内の知人や市職員が岡住さんの夢に共感し、熱心に誘ってくれたことが大きかった。紹介された旧男鹿駅舎を一目で気に入り、指定管理者から建物を借り受けることに。改修に要した約1億5千万円には、秋田銀行と日本政策金融公庫による融資を充てた。「知人たちが親身になって動いてくれたことが何よりうれしかった。その恩をこの地での酒造りを通じて返していく」と誓う。

 現在は8人を雇用し、うち7人が県内出身者。どぶろくと輸出用の酒を造るため、こうじや酒母、もろみ造りに忙しい日々を送っている。自らの挑戦が日本酒造りへの新規参入に道を開き、志を持った人たちが独立して日本酒の魅力がさらに高まっていくという未来も思い描く。



理想は「磨かない酒」

 理想とする酒は「磨かない吟醸酒」。岡住さんは「酒造りの際に米を削るのは雑味につながるタンパク質などを減らすためだが、どこまでも磨き込んだ酒ばかりがもてはやされるのは違和感がある。農家が手間暇かけた米をできるだけ無駄にしたくない」と語る。

 無肥料、無農薬で育て、肥料由来のタンパク質が少ない自然栽培米であれば米の磨きを抑えられると考える。これまで酒造所に醸造を委託して造ってきた酒の精米歩合は90%だ。米は契約農家からも仕入れるが、能代市に自社田を持ち、夏は稲作にも取り組む。

 手掛ける酒が評判となって観光客が訪れ、地域が潤うことを目指す。将来的には、市内で食品加工所や宿泊施設を備えたレストランを開設する構想も温めている。「さまざまな事業を展開して、一人でも多くの雇用を生み出したい」

 こだわりの酒造りなどさまざまなビジョンの根底には「自分に関わってくれる全ての人を幸せにしたい」という思いがある。農家から米を市場価格より高い値段で仕入れ、酒販店の手元に残るマージンも業界の慣習より高めに設定し、従業員の給料もできるだけ多く支払う。「米を磨かずに酒を造り、四合瓶入り3千円で売ることができれば実現できる」と信じている。

 そのため、「稲とアガベ」の名で売り出す酒のブランド確立に力を注ぐ。これまで委託醸造して販売した酒は順調に売れ、人気は全国に広がりつつある。

レストランを併設

 醸造所には、酒と料理の相性にこだわったディナーを提供する完全予約制のレストランも併設。稲とアガベの酒や、岡住さんが選んださまざまな酒とマッチするメニューの開発を進めている。12月以降に予約受け付けを始める予定だ。日中はテークアウト専門で、酒かす入りの発酵ソフトクリームや、地元食材を使ったホットサンドなどの軽食を販売する。

 出来上がったどぶろくなどは11月下旬に販売を開始する予定。

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