往復10時間、ハードな和賀岳登山なぜ人気? 大仙市主催で20年超続く

ニッコウキスゲが群生する薬師平で写真を撮り合う参加者
 秋田と岩手の県境に位置する和賀岳(1439メートル)。10時間ほどかけて山頂までを往復する「ニッコウキスゲ観賞和賀岳登山」を、秋田県大仙市太田支所が毎年夏に行っている。参加者を募るとすぐ定員に達するほどの人気だが、県が公表する指標によると、県内で最も体力が必要な山だ。何が人を引き付け、なぜハードな会が長く続いているのか。実際に参加して探った。

 4日午前6時ごろ、大仙市太田町の小路又キャンプ場に宮城や岩手といった県外の面々も含む参加者約30人のほか、ガイド5人と市役所職員8人が集まった。この大所帯で、近くの甘露水登山口から山頂を目指した。

 序盤の森は地面にシダが生い茂り、うっそうとしている。時に巨大な倒木の下をくぐったりまたいだりしながら登り続けた。


 樹林帯を抜けると、薬師岳(1218メートル)の山頂。そこから薬師平へ進むと、登山道脇にだいだい色のニッコウキスゲの花畑が広がっていた。


 ここから和賀岳までは雄大な景色を眺めながらの稜線(りょうせん)歩き。登りと下りの繰り返しで、参加者の中には息の上がった人もいた。登山開始から約6時間、午後0時半ごろに和賀岳山頂に到着した。

 県が公表している「山岳グレーディング」によると、和賀岳はルート全長17・3キロ、登りと下りの累積標高差が各1・4キロで、標準的な歩行時間は9時間10分となっている。それらから算出した体力度は、公表されている県内31の山の中で最も高い。

 今回、先頭を歩いたのは和賀岳を含む真木真昼県立自然公園の管理員で登山会リーダーの佐藤良浩さん(57)。原始的な森、ダイナミックな稜線など和賀岳の魅力を挙げ「登りがいのある、玄人好みの山だ」と語る。

 太田支所によると、この登山会をいつから開催しているかは確認できないものの、旧太田山岳会が主催していた会を旧太田町役場が引き継ぐ形で始まったという。2005年の合併前のことであり、20年超続いている。

 佐藤さんの前には、元町役場職員で、退職後に真木真昼県立自然公園管理員を務めた故・倉田陽一さんが会を仕切っていた。倉田さんは山域の植生をまとめた著書もあり、佐藤さんが「親方」と仰ぐ人物だ。

 倉田さんの発案で始まった県民向けの登山教室は、今も太田公民館で続いている。座学と実技を1年間で計12回受講し、登山知識を習得するものだ。

 今回同行した市職員の中にも受講者がいた。山行中はガイドと協力して列に分散し、参加者の歩行ペースや疲労度合いを無線機でやりとりし、歩行速度や休憩地点を決めながら進んだ。ハードな登山会を市が毎年実施できる背景には、講座などで知見を蓄えた職員らの存在もある。

 過去には、和賀岳までの負担が大きいため手前の薬師平までのコースに短縮しようという話も持ち上がった。「それでも、和賀岳を知ってほしいという思いで続けてきた。簡単にはたどり着けない山だからこそ、会をやることで来てくれる人もいる」と佐藤さんは話す。

 参加者は魅力を存分に味わった様子だった。母親と2人で参加した鈴木聡美さん(大曲高3年)は下山後、「びっくりするほどきれいな景色を見られた」と声を弾ませた。

 市は和賀岳を含む真木真昼県立自然公園を訪れる人の増加を図り、観光振興にもつなげたい考え。登山会はその重要な一端を担っている。

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