大森山の新観覧車は福岡で愛された遊園地から 5月運転予定

ゴンドラが取り外され、解体が進む「かしいかえん」の観覧車=11日夕、福岡市東区(撮影・星野楽)、西日本新聞提供
 秋田市大森山動物園に、福岡から新しい観覧車がやってくる。2021年末に閉園した福岡市内の遊園地「かしいかえんシルバニアガーデン」で活躍した観覧車を移設する。観覧車は現在、16基のゴンドラが全て取り外され、骨組みの解体が進められている。

 かしいかえんを運営していた西日本鉄道(福岡市)と、大森山動物園内の遊園地「アニパ」を運営する豊永産業(大阪市)によると、観覧車は17年春にかしいかえんのリニューアルオープンに合わせて建て替えられ、閉園まで4年9カ月活躍した。高さ約36メートルで、園内のシンボルとして愛された。

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 アニパでは、昨年まで運行していた観覧車(1990年設置)の老朽化が進行。豊永産業が更新を検討していたところ、新設から年数の浅い、かしいかえんの観覧車を移設して活用できることになった。

 解体は来月中にも終わり、3月には骨組みやゴンドラなど各部材を運び出す見込み。アニパでは昨年11月中に観覧車の解体がおおむね完了し、12月以降は移設に向けた基礎工事を進めている。

 移設する観覧車は、アニパの旧観覧車になかった冷暖房をゴンドラ内に備えている。塗装などの外観も、かしいかえんで活躍していた時のまま大きく手を加えずに活用できる見通しという。組み上げまで予定通りに進めば、5月の大型連休に新観覧車の運転を始める。

大森山動物園開園50周年 市民に愛され共に成長

 今冬の秋田市はここまで、雪が少ないため、アニパ内の工事は順調という。豊永産業秋田事業所の道下智也所長は「以前の観覧車は冷暖房がなく、特に夏場は暑すぎてお客さんを乗せられない日もあり、心苦しかった。新しい観覧車の受け入れに向け、このまま作業が順調に進むといい」と話す。

 かしいかえんは福岡市東区の海岸近くに立地し、市中心部からアクセスのよい遊園地として閉園まで65年間、福岡市民らに利用された。西日本鉄道の広報担当者は「閉園まで愛された観覧車が秋田で再び活躍し、多くの人に親しんでもらえればうれしい」と話した。

福岡では…「秋田でも乗ってみたい」新天地移設に驚きと喜び
 北東へ約1100キロ。福岡市東区の遊園地「かしいかえん」にあった観覧車が、秋田市へと旅立つ。新型コロナウイルス禍のあおりを受け、惜しまれながらの閉園から1年余り。親しまれたシンボルが新天地で再び笑顔を乗せて回ることに、福岡では驚きと喜びの声が上がっている。

 福岡市内唯一の遊園地だったかしいかえんは、戦前の「香椎チューリップ園」を前身に1956年、レジャー時代の幕開けとともに開園。最盛期の86年度には最多の約57万人が訪れた。しかし、行楽の多様化や施設の老朽化とともに来園者は減少。コロナ禍に伴う外出自粛が追い打ちをかけ、運営する西日本鉄道(同市)が閉園を決めた。

 65年間続いた遊園地の閉園に、市民のショックは大きかった。「思い出が詰まった場所の閉園はとても残念です」(福岡市、40歳女性)。西日本新聞(福岡市)が実施したアンケートでは、2週間ほどで100件超のコメントが寄せられた。当時を振り返り「開園翌年ごろに一緒に行った母が、自分より楽しんでいた」(東京都、67歳男性)との思い出もあり、投稿者は10代~70代と幅広かった。

 最終営業日の2021年12月30日。観覧車には長蛇の列ができ、閉園の1時間半以上前に受付を終えるほどだった。高さ36メートル。1キロほど離れた場所に100メートルを超えるタワーマンションもできたが、来園者は惜しむようにゴンドラからの景色を眺めていた。


 跡地で遊具の撤去が進む中、観覧車は秋田市への移設が決まった。交流サイト(SNS)で福岡の人たちから相次いだのは、驚きと同時に、次の活躍の場ができたことを喜ぶ反応だ。

 子どもと出掛けたという福岡市博多区の会社員、斉城晋さん(45)もその1人。「自分が子どもの頃、近づくにつれて大きくなる観覧車にわくわくした。解体されるだけと思っていたが、秋田に行く機会があれば乗ってみたい」と話した。

 1周は約7分40秒。新しい景色で刻む月日は、少しでも長いものであってほしいと願う。
(西日本新聞・福間慎一)

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