商品にツッコむPOP 自由さ人気/十和田

ヤマヨ十和田店の売り場に所狭しと並ぶPOP。内容に思わず目が留まる

 商品への容赦ないツッコミ、力の抜けた手描きイラスト、自虐系の小ネタ-。青森県十和田市東二番町の食品スーパー・ヤマヨ十和田店には、他店ではなかなか見かけない商品紹介の「POP(ポップ)広告」が並ぶ。店側は「遊び半分どころか、遊びでしかない」と笑うが、自由な職場環境を生かし商品にひたすら向き合った従業員たちの努力の結晶だ。

 同店のユニークなPOPの生みの親は店長の齊下(さいか)謙介さん(40)。10年ほど前、ジュースや調味料、カップ麺などを扱う非生鮮部門を担当する一社員だった頃、商品を見て思ったことを率直に文字にしたのが始まりだった。「スーパーのPOPは堅苦しいとずっと思っていた。書店やレンタルDVDショップのように自由に作ってもいいじゃないか、と。最初の作品がどんなだったかは覚えていないが、商品にツッコミを入れるようなPOPだった。面白くしようとか人に見てもらいたいとか、そんな意識はなかった」

 ヤマヨは鮮魚、生鮮食品など5部門に分かれ、各部門の担当者が仕入れから陳列、商品紹介まで全てを自由にできる裁量がある。そのため、齊下さんが前例のないPOP作りを上司に止められることも、商品製造元の顔色を気にすることもなく、本音を存分にPOPに書き込むことができた。

 もう一つ、取り扱う商品事情も後押しとなった。ヤマヨは他のスーパーに比べ「スポット品」と呼ばれる短期間のみ販売する商品を多く扱う。必然的にPOPの“寿命”は短く、最長でも1カ月弱、最短でたった1日で剥がされる。「寿命が短いからこそ言葉で遊ぶ余裕があったのかも。長く使われると分かっていたら、もう少し真剣に作っていただろう」と笑う。

 齊下さんによると、POP作りは意外に難しい。商品を褒める言葉を並べただけでは客の心に響かず、的を射たツッコミをするには商品の特徴を理解していなければならない。担当者は色、形、成分など細部に目を光らせツッコミどころを探す。「内容量345ミリリットルのお茶のペットボトルに対して『5ミリリットルって中途半端じゃん』とかね。商品の観察という点ではうちの店員は他店に負けていませんよ」

 ユニークなPOPに変えた2010年ごろから同店の売り上げは堅調を維持し続けているが、「POPが影響したわけではないと思う」と齊下さん。ただ、客層はこの10年で変わったという。これまで来店者の多くは50代以上だったが、POPがインターネットの交流サイト(SNS)で注目を集めたことから10代や20代の来店も増え、店側にとって客層拡大のチャンスが広がった。

 「本音を正直に」を方針に築かれたヤマヨの“POP文化”。齊下さんは「短い言葉で客の心にどれだけ刺さるかを今も考えている。商品を手にした瞬間のフレッシュな気持ちを、これからもPOPに書き続けていきたい」と語る。

 ちなみに、ヤマヨのPOPには「タカヒロ」なるキャラクターが頻繁に登場するのだが、齊下さんによると「ヤマヨに実在する社員」とのこと。ただ本人は人一倍恥ずかしがり屋だそうで、あいにく取材はかなわなかった。

(写真のPOPの内容や価格は、全て8月上旬時点のものです)


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