感謝の〝一杯〟311円 宮古のラーメン店、2日間格安提供

たろう観光ホテルの隣にあった実家跡地に立ち、10年間を振り返る大久保久枝さん。再び心を一つに困難を乗り越えようとチャリティー企画を行う=宮古市田老
 「もう一度、心を一つに逆境を乗り越えたい」。東日本大震災で父と弟を亡くした大久保久枝さん(53)は今月11、12の両日、夫秀司さん(53)と営む宮古市崎鍬ケ崎のラーメン店「大久保」で復興支援チャリティーを行う。震災後の営業再開時に唯一出せた中華そばを格安で提供し、売り上げを義援金として寄付する。あれから10年。震災直後のように再び絆を結び、コロナ禍克服の力にしようと企画した。

 普段600円の中華そばを311円で提供し、売上全額を市の震災災害義援金に寄付する。「過去は変えられないが、未来はみんなの力で変えられる」。そんな思いが行動させた。

 2011年3月11日は同市田老の自宅にいた。当時田老一中2年の長女わかなさん(24)と三陸鉄道田老駅に避難途中、出会った弟佐々木徹さん=当時(41)=から、父佐々木喜久蔵さん=当時(69)=が逃げないつもりらしいと聞いた。さまざまな事業を手掛け「一度決めたら曲げない」性格だった喜久蔵さん。大久保さんは、大津波は予想しておらず、そのまま徹さんと別れた。

 駅のホームから、波がまちをのみ込む様子を目の当たりにした。仕事場にいた喜久蔵さん、自動車修理の事業所に戻ったとみられる徹さんも犠牲になった。

 実家や自宅も全壊。ラーメン店が再開できたのは設備が修復した約1カ月後だった。当初は仕入れが安定せずメニューは中華そばだけだったが、待ち望んだ客がその一杯を喜んだ。

 「私が強く避難を呼び掛けていたら、結果は変わっただろうか」。後悔と喪失感にもさいなまれたが、夫婦で懸命に働いた。常連客ら多くの人に支えられた。コロナの影響で経済や交流も停滞する中、もう一度団結し、難局に挑もうと夫婦でチャリティーを決めた。

 「絶望の中でも国内外の人の思いが通じ合い、復興へ助け合った。だからコロナも克服できる」と大久保さん。一緒に働くわかなさんも「もう一度震災について考え、心を一つにするきっかけになってほしい」と願いを込める。

 同店の営業時間は午前11時から午後3時まで。

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